フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ
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コロッセオ建設が意味するローマ帝国の安定
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ローマ帝国正統の血筋の途絶…皇帝ウェスパシアヌスの登場
フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ(1)時世に恵まれたウェスパシアヌス
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマ為政者の正統の血筋がネロの死によって途絶えた後、内乱の時代を経てフラウィウス家のウェスパシアヌスが平定し、皇帝となる。もはや皇帝は血筋より軍事的才能、実務能力だとローマ市民の考え方も変化していた。さらにウェスパシアヌスは時世に恵まれたと早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏は言う。時代が歓迎した皇帝像とはどのようなものだったのか?(全5話中第1話)
時間:10分10秒
収録日:2017年11月17日
追加日:2018年3月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマ正統の血筋が途絶え、皇帝推挙の基準も変化


 ネロが亡くなって、カエサル、アウグストゥス、それからティベリウスという、最初のローマの最高の為政者であった人たちの血を引く人間が、そこで途絶えてしまうということになりました。

 それまででしたら、やはり元老院貴族のような身分の高い人、それもできるだけローマの由緒正しい家系の人間が皇帝になるべきだというものがローマの人たちの中にはあったのです。しかし、結局ネロの死によって、その家系が途絶えてしまいましたし、この頃にはローマの由緒正しい貴族の家系そのものがかなり途絶えているようなところもあったのです。

 そのため、ローマのみならず、イタリア半島全体にわたり、地方出身の貴族でも皇帝として推挙されるという状態で、貴賤入り乱れていたのです。


●内乱の時代をフラウィウス家のウェスパシアヌスが平定


 まず、ネロが亡くなってからイベリア半島でかなり老人だったガルバという男が出てきて、皇帝に推挙されました。しかしすぐに、その部下でガルバより少し若くネロとはかなり友人関係にあったオトーという人物が反旗を翻すことになります。

 ローマ帝国の南の方でそうした動きがある中、北方にはゲルマニアの軍団に押されたウィテリウスという人物がいました。ウィテリウスにはものすごい大食漢だったというエピソードがあるのですが、この人が出てきて、およそ1年にわたって騒々しく内乱が起こります。

 ガルバにしろ、オトーにしろ、それからウィテリウスにしろ、彼らをみると皇帝は特にローマで担ぎ出される必要がなくなってきたということで、それが新しい時代の非常に大きな特徴なのではないかと思います。そうした3人が皇帝として次々と出てくる、いわば内乱の時期でした。この時期について、歴史家のタキトゥスは『同時代史』の中でその3人と最後に出てくるウェスパシアヌスという人物のことや内乱の様子、さまざまな駆け引きのことを詳細に論じています。この3人ないし4人が相争う中、結局、フラウィウス家のウェスパシアヌスが、いわばドナウ軍団に擁立されて天下を平定するという形になったのです。


●田舎貴族出身のウェスパシアヌス皇帝が意味するもの


 ローマからほど近い所にサビニ地方という田舎町があるのですが、ウェスパシアヌスはそこの名家の出身でした。およそ彼は、自分がローマ皇帝に...

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