ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「共和政」という建前を保持したオクタウィアヌス
ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ(2)プリンケプス・オクタウィアヌス
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏による古代ローマ史連続講義。アクティウムの海戦で事実上、ローマ全域の支配権を手にしたオクタウィアヌスだが、慎重派の彼は容易にローマ第一の支配者の顔を見せようとはしなかった。終身独裁官宣就任がその後のカエサルの運命を左右したことをよく理解していたからだ。では、彼が進んで用いた称号とは一体どのような意味を持っていたのだろうか?(全8話中第2話)
時間:6分48秒
収録日:2017年6月16日
追加日:2017年7月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●共和政の建前にこだわった慎重派オクタウィアヌス


 オクタウィアヌスに全権が帰されるといっても、ローマ社会には前々からいっているように共和政の伝統が強い、つまり単独の支配者になるということに懸念を持たれてしまうのです。周りからそういう疑惑を持たれると、カエサルのような世界史上まれに見る優れた人物であっても、結局殺されてしまうわけです。スエトニウスという歴史家は、「カエサルは、結局殺されてしかるべき人物だった。あれだけの大改革をやってしまうと、どこかで反感、ひずみが出てくるのは当然のことだ」と、そういう評価を下しています。恐らく、その評価は当たっていないわけではないと思います。

 しかし、とにかく大変に為政者、あるいはリーダーとして有能な人物だったそのカエサルすら、結局暗殺されてしまうということになったわけですから、オクタウィアヌスは、やはり、その後の進め方を、非常に慎重にやっていきます。つまり、共和政という建前を基本的には取っていきますが、言い換えるなら共和政というオブラートの中にローマの国家の体制を包み込んでいく、そうしたシステムを取っていくことになるのです。


●元老院を尊重した「最高指揮権保持者」オクタウィアヌス


 共和政の体制を包み込むというのはどういうことか。具体的にいいますと、要するに、元老院を尊重するということです。第1回三頭政治では元老院を無視したといいますか、クラッスス、ポンペイウス、それからカエサル、特に最後にカエサルは元老院の意向をかなり軽んじたところがありました。やはり、オクタウィアヌスはその轍を踏まないよう注意したのです。われわれは、オクタウィアヌスをいわゆる「初代皇帝(アウグストゥス)」というように、皇帝という名前を付けますけれども、皇帝という名称はこの時代には全くありませんでした。

 後に、オクタウィアヌスが亡くなった時の称号が、インペラトール・カエサル・ディーウィー・フィーリウス・アウグストゥス・ポンティフェクス・マクシムス、云々…という長ったらしいものがあるのです。一番最初の「インペラトール」はどういう意味かというと、最高指揮権保持者という意味です。このインペラトールという言葉が一番最初にありますし、長ったらしい称号をいちいち言っているわけではなく、いわゆる皇帝に当たる人物を「インペラトール」と呼び掛けるようになり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保