●後継者問題に悩み抜いたアウグストゥスの晩年
アウグストゥスが亡くなるのは紀元後14年。この時に76歳ですから、古代人としてはとてつもなく長生きした部類ではないかと思います。ただ、彼にとって一つの大きな不幸だったのは、後継者に恵まれなかったことでした。
アウグストゥスは最初、自分の姉であるオクタウィアの息子マルケルスに目をつけ、自分の娘であるユリア(ユリウス家の娘なので、ユリアと呼ばれます)と結婚させます。つまり、自分の甥であるマルケルスを娘婿に仕立てたわけです。
このように、自分に男の子の実子がいないアウグストゥスは血筋にこだわり、マルケルス夫妻に期待をかけますが、肝心のマルケルスが若くして病死してしまいます。マルケルスの死をめぐっては、アウグストゥスの側近であったアグリッパとの間で、次の権力をめぐる確執があったのではないかとも推察されていますが、現段階の研究では「病死」ということになっています。
マルケルスと死に別れたユリアは、別の人物と結婚させられ、そこで二人の息子をもうけます。これこそ、アウグストゥスからすれば直系の孫ということになります。
アウグストゥスは当然二人の孫に大変な期待をかけるのですが、この二人がともに二十歳になるやならずの年齢で、よもやの死を迎えます。アウグストゥス自身は長生きをしたものの、自分の直系といっていい甥や孫に次々に先立たれるのは、非常に不幸な出来事だったといえるでしょう。
●リウィアとの婚姻と連れ子ティベリウス
古代ローマ社会では、生涯に2~3回結婚するのは当たり前でした。アウグストゥスもまた、誰を後継者に任命するかという問題が決まらないまま、リウィアという非常に聡明な女性と再婚します。
リウィアの彫像は何枚も残っていますが、古代ローマ人の彫像の中で、私はリウィアの像が最も好きです。美人というよりもなんとなくかわいらしく感じるところがあります。だから、アウグストゥスと私は趣味が合うのではないかとも思っています。彼女の彫像はルーヴル美術館をはじめ、さまざまな場所に残っています。
ともあれアウグストゥスは非常にリウィアを気に入ったらしく、その後、終生リウァイアが妻として仕えていくことになります。ただ、出会った頃のリウィアは別の男性と結婚していました。そこで、皇帝アウグストゥスは策謀を弄し、リウィア...