ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
陰鬱な2代目皇帝ティベリウス「ヴィラ・ヨヴィス」に籠る
ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ(7)苦闘するティベリウス
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
アウグストゥスの死後、皇帝の座に就いたティベリウスだったが、その治世や人物に対する評価は真っ二つに分かれている。どちらかというと同世代に近いほど厳しく、2000年後の最近になって再評価が進んでいる。その原因は何なのか。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏に案内していただこう。(全8話中第7話)
時間:11分38秒
収録日:2017年6月16日
追加日:2017年8月31日
カテゴリー:
≪全文≫

●陰鬱な皇帝ティベリウスがますます引きこもった理由


 ティベリウスが皇帝になったのは、紀元14年です。皇位についてからも、彼の陰鬱で暗い感じは変わりませんでした。最初のうちは彼もそれを気にして、なるべく人前に出て陽気に振る舞うことを心掛けていました。

 ローマ皇帝にとって「人前に出る」ことはとても大事です。どういう場所かというと、戦車競争の試合や剣闘士の興行です。このような場には貴賓席が設けられていて、その席に座る皇帝もまた民衆にとっては見物対象の一つなのです。剣闘士興行や戦車競走を「見ている皇帝」を周りが見るわけですから、あまり熱中していない様子を見せると評判が良くなく、熱中すればするほど民衆の支持率が上がりました。

 しかし、ティベリウスは、そういうことがもともと好きではなかったのかもしれません。何回かやっているうちに、だんだん地味で暗い性格の「地」が出てきてしまうわけです。そのため、民衆からの人気が下がっていき、それにつれ、剣闘士興行にもあまり顔を出さなくなっていきました。


●ゲルマニクスの活躍と死


 ティベリウスの弟であるドルススとユリウス家に連なる妻の元に生まれたゲルマニクスは、彼とは対照的な人物として、以前から評判でした。軍事的に華やかな功績も挙げますが、非常に見栄えのいい長身のイケメンでもありました。しかも演説もうまい。そればかりか非常に明朗闊達な性格で、人に対して優しい態度を取ることでも知られています。

 のちに第4代皇帝になるクラウディウスはゲルマニクスの弟ですが、周りから疎んじられる性格だったようです。実際に彼は親族からのいろいろないじめにも遭うのですが、そんな時に「兄のゲルマニクスだけが自分を温かく処遇してくれた」という記述が残っています。ゲルマニクスはそのぐらい、各方面で人気を博した人物でした。

 そうすると、ティベリウスの内心は推して知るべし、です。表立ってはいえないけれども、次期皇帝が若くて人気のある人物であればあるほど、自分にとっては邪魔な存在に見えてきます。自分の地位がいつかは脅かされるのではないかという漠然とした予感を感じてしまうわけです。

 しかし、ゲルマニクスは、ティベリウスが皇帝に就いてからも、さまざまな功績を挙げます。凱旋してきたゲルマニクスがそのままローマにとどまると、民衆の人気が一層高まるという懸...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(2)50歳からの目標
伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
核DNAからさぐる日本のルーツ(2)原人・旧人・新人
原人・旧人・新人は長い年月をかけて分岐と混血を重ねた
斎藤成也