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ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ
陰鬱な2代目皇帝ティベリウス「ヴィラ・ヨヴィス」に籠る
ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ(7)苦闘するティベリウス
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
アウグストゥスの死後、皇帝の座に就いたティベリウスだったが、その治世や人物に対する評価は真っ二つに分かれている。どちらかというと同世代に近いほど厳しく、2000年後の最近になって再評価が進んでいる。その原因は何なのか。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏に案内していただこう。(全8話中第7話)
時間:11分38秒
収録日:2017年6月16日
追加日:2017年8月31日
収録日:2017年6月16日
追加日:2017年8月31日
≪全文≫
●陰鬱な皇帝ティベリウスがますます引きこもった理由
ティベリウスが皇帝になったのは、紀元14年です。皇位についてからも、彼の陰鬱で暗い感じは変わりませんでした。最初のうちは彼もそれを気にして、なるべく人前に出て陽気に振る舞うことを心掛けていました。
ローマ皇帝にとって「人前に出る」ことはとても大事です。どういう場所かというと、戦車競争の試合や剣闘士の興行です。このような場には貴賓席が設けられていて、その席に座る皇帝もまた民衆にとっては見物対象の一つなのです。剣闘士興行や戦車競走を「見ている皇帝」を周りが見るわけですから、あまり熱中していない様子を見せると評判が良くなく、熱中すればするほど民衆の支持率が上がりました。
しかし、ティベリウスは、そういうことがもともと好きではなかったのかもしれません。何回かやっているうちに、だんだん地味で暗い性格の「地」が出てきてしまうわけです。そのため、民衆からの人気が下がっていき、それにつれ、剣闘士興行にもあまり顔を出さなくなっていきました。
●ゲルマニクスの活躍と死
ティベリウスの弟であるドルススとユリウス家に連なる妻の元に生まれたゲルマニクスは、彼とは対照的な人物として、以前から評判でした。軍事的に華やかな功績も挙げますが、非常に見栄えのいい長身のイケメンでもありました。しかも演説もうまい。そればかりか非常に明朗闊達な性格で、人に対して優しい態度を取ることでも知られています。
のちに第4代皇帝になるクラウディウスはゲルマニクスの弟ですが、周りから疎んじられる性格だったようです。実際に彼は親族からのいろいろないじめにも遭うのですが、そんな時に「兄のゲルマニクスだけが自分を温かく処遇してくれた」という記述が残っています。ゲルマニクスはそのぐらい、各方面で人気を博した人物でした。
そうすると、ティベリウスの内心は推して知るべし、です。表立ってはいえないけれども、次期皇帝が若くて人気のある人物であればあるほど、自分にとっては邪魔な存在に見えてきます。自分の地位がいつかは脅かされるのではないかという漠然とした予感を感じてしまうわけです。
しかし、ゲルマニクスは、ティベリウスが皇帝に就いてからも、さまざまな功績を挙げます。凱旋してきたゲルマニクスがそのままローマにとどまると、民衆の人気が一層高まるという懸...
●陰鬱な皇帝ティベリウスがますます引きこもった理由
ティベリウスが皇帝になったのは、紀元14年です。皇位についてからも、彼の陰鬱で暗い感じは変わりませんでした。最初のうちは彼もそれを気にして、なるべく人前に出て陽気に振る舞うことを心掛けていました。
ローマ皇帝にとって「人前に出る」ことはとても大事です。どういう場所かというと、戦車競争の試合や剣闘士の興行です。このような場には貴賓席が設けられていて、その席に座る皇帝もまた民衆にとっては見物対象の一つなのです。剣闘士興行や戦車競走を「見ている皇帝」を周りが見るわけですから、あまり熱中していない様子を見せると評判が良くなく、熱中すればするほど民衆の支持率が上がりました。
しかし、ティベリウスは、そういうことがもともと好きではなかったのかもしれません。何回かやっているうちに、だんだん地味で暗い性格の「地」が出てきてしまうわけです。そのため、民衆からの人気が下がっていき、それにつれ、剣闘士興行にもあまり顔を出さなくなっていきました。
●ゲルマニクスの活躍と死
ティベリウスの弟であるドルススとユリウス家に連なる妻の元に生まれたゲルマニクスは、彼とは対照的な人物として、以前から評判でした。軍事的に華やかな功績も挙げますが、非常に見栄えのいい長身のイケメンでもありました。しかも演説もうまい。そればかりか非常に明朗闊達な性格で、人に対して優しい態度を取ることでも知られています。
のちに第4代皇帝になるクラウディウスはゲルマニクスの弟ですが、周りから疎んじられる性格だったようです。実際に彼は親族からのいろいろないじめにも遭うのですが、そんな時に「兄のゲルマニクスだけが自分を温かく処遇してくれた」という記述が残っています。ゲルマニクスはそのぐらい、各方面で人気を博した人物でした。
そうすると、ティベリウスの内心は推して知るべし、です。表立ってはいえないけれども、次期皇帝が若くて人気のある人物であればあるほど、自分にとっては邪魔な存在に見えてきます。自分の地位がいつかは脅かされるのではないかという漠然とした予感を感じてしまうわけです。
しかし、ゲルマニクスは、ティベリウスが皇帝に就いてからも、さまざまな功績を挙げます。凱旋してきたゲルマニクスがそのままローマにとどまると、民衆の人気が一層高まるという懸...
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