ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2代目皇帝ティベリウスが再評価されている理由とは?
ローマ帝国皇帝物語~ローマ史講座Ⅴ(8)ティベリウスは愚帝だったのか
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマ帝国の絵を描いたのがカエサルなら、それを作ってみたのがアウグストゥスで、実際に機能するかどうかはティベリウスの代に委ねられたといわれている。ティベリウス評価が最近高まっている理由は「システム」設計と運営の難しさを、誰もが知るようになったためではないだろうか。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏に案内していただこう。(全8話中第8話)
時間:7分13秒
収録日:2017年6月16日
追加日:2017年9月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●帝国の管理運営を軌道に乗せたティベリウス


 ティベリウスの治世について別の見方をすると、宮廷内のトップの中の権力争いは熾烈だったものの、ローマ帝国全体から見れば、非常に順調に管理運営が進んでいたと言われています。おそらくアウグストゥス以後ティベリウスにかけて、官僚制の整備がかなり進んでいたのでしょう。だから、トップが権力争いに明け暮れていても、その下にいる官僚制の機構はかなりうまく機能していたものと思われます。

 ティベリウスという人物に対する評価自体も、表向きには非常に暗いとか陰惨だとか、またゲルマニクス殺害疑惑のようなマイナス評価が多い一方で、軍事的な評価は高い。アウグストゥスの部下だった頃の軍事的功績はもとより、行政面でも管理運営能力が高く、システムをきちんとつくる面で非常に有能だったのではないかと評価されています。表面的には人気のない皇帝ではあったが、最近、軍事面から行政面にかけて、システムをうまく機能させていったという点で評価が高まっているのです。

 カプリ島に隠棲していた紀元37年に、彼は亡くなります。死因については「殺されたのではないか」という言われ方もしていますが、確証はありません。宮廷で起こっていた陰惨な策謀がカプリ島にまで入り込んで、ティベリウスを暗殺ないし毒殺したのではないかと考える余地はありそうです。


●典型的な2代目の苦しみを味わったティベリウス


 軍事的・行政的能力に秀でていたティベリウスは、典型的な2代目の苦しみを味わったと言えそうです。

 初代は創業者ですから一からつくり上げていって、ある程度出来上がった時点で大体引退することになります。カエサルにいたっては、ほとんど最初の基盤となるアイディアを出したところで終わってしまったといえるでしょう。アウグストゥスは、そのアイディアを実現していきました。しかし、それが実際にうまく機能するかどうかの検証は、まさにティベリウスの時代にこそ必要だったのです。

 そして、彼はそうした官僚機構をきちんと機能させました。一部には、ティベリウスが表舞台から消えたためにその権力を利用する人物はいましたが、たとえそうした人物がいたにせよ、その下にいた官僚たちは非常にうまく機能していたということです。


●カリグラからネロへ。ゲルマニクスゆかりの皇帝たち


 ティベリウスの没後は、カリグラ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
クーデターの条件~台湾を事例に考える(2)クーデターの成功条件とリスク
軍の配置を見れば分かる!台湾のクーデター対策とは
上杉勇司
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤