新しい循環文明への道
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都市鉱山のデジタルツイン…金やレアアースの宝庫がわが国に
新しい循環文明への道(2)都市鉱山のデジタルツイン
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
2020年東京オリンピックのメダルは市民供出による廃スマホから作られたが、スマホは金、銀、銅、レアアースが含まれた都市鉱山である。実はスマホは、自然鉱山より30倍も品位の高い金鉱山だともいえるのだ。問題はその回収方法だが、「都市鉱山のデジタルツイン」の手法を使えば可能だと小宮山座長は提案する。「課題先進国」日本ならではのプラットフォームで真のAI社会を実現させるためのビジョンを語る。(全2話中第2話)
時間:7分17秒
収録日:2025年12月3日
追加日:2026年1月1日
≪全文≫

●バイオマスと再生可能エネルギーの社会実装へ


 採掘文明から循環文明への転換の時代が到来しています。循環の基盤となるのは第一に再生可能エネルギー、第二に都市鉱山、第三がバイオマスです。こうした文明観を実社会に接続するために、プラチナ構想ネットワークは活動しております。

 バイオマスに関しては、森林産業イニシアティブを立ち上げ、全国16地点で社会実装しています。

 ついで、再生可能エネルギー産業イニシアティブを一昨年(2024年)暮れに立ち上げ、本年早々、「2050年に全エネルギーの80パーセントを国内の再生可能エネルギーで賄う」という、実現可能な未来像を発表します。

 その中核となるのは、ソーラーシェアリング。全国の田畑、耕作放棄地、牧草地の全てにソーラーシェアリングを適用すると、日本の全発電量の5倍の電気が取れます。もちろん全部やる必要はなくて、20パーセントもやれば十分です。


●「都市鉱山のデジタルツイン」とは何か?


 次に、都市鉱山についてお話ししたいと思います。最初に、三つの事例で示しましょう。

 昨年(2025年)のプラチナ大賞で、大成建設と日本通運共同のプロジェクトが優秀賞に輝きました。それは、ビルを作っているときに出る端材についてですが、今はほとんど廃棄しています。トラックに積んで、廃棄物として有料で捨てているわけです。

 これを再利用する。そのとき空のトラックが走るといった無駄をしないように、どこで何が廃棄されて、どこで再利用できるのか、全体をうまく設計するということです。現在、他の建設会社や物流会社と共同のシステムにすることを考えておられるそうです。これが第一。

 第二の例は、昨年(2025年)11月、東京製鐵という鉄のスクラップを再生する会社の鋼板を、トヨタが購入するという発表がありました。トヨタが買う理由は、鉄鉱石から作る鉄よりも、スクラップから作る鉄の方がエネルギー消費は少なく、5分の1だからです。

 スクラップ鉄が省エネであることは前から分かっていたのですが、自動車は高張力鋼――通称「ハイテン」と呼ばれます――という高性能の鉄を必要とします。それをスクラップから製造できるようになったということです。廃棄物から物を作ると品質の落ちるものしかできない、そう思っている人も...

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