平和の追求~哲学者たちの構想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に重点を置いたルソーの考える、国家間平和の在り方とはどのようなものであったか。(2025年8月2日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:10分53秒
収録日:2025年8月2日
追加日:2025年12月16日
≪全文≫

●「暴政と戦争こそ人間にとっての最も大きな災厄である」


川出 さて、このような形で、国家と国家を組み合わせてみるといろいろな可能性があるのではないかということをさまざまな論者が議論していたのですが、ここにジャン=ジャック・ルソーに登場してもらいたいと思います。

 ルソーは非常に思想的、哲学的に鋭く、深く、豊かなところがあり、今までのような議論と全くかけ離れていることをいっているわけではないのですが、問題の所在を鋭くえぐるような議論を展開します。

 ルソーはなかなかかっこいいことを言います。こんなことを言うわけです。「暴政――もう少し耳馴染みのある言葉で置き換えれば『専制』でしょうか――と戦争こそ人間にとっての最も大きな災厄である」といった認識を示します。そして、「暴政を克服する、戦争を克服する。これができなければ、政治理論の名に値しない」と言うわけです。

 実際にルソーが見るところ、現状はどうなっているのか。一国内ではまさにホッブズが描き出したように「自然状態」は克服されて戦争状態からは脱却したけれど、その代わりとして抑圧的な専制支配に服してしまっている。つまり自由を失ってしまった状態にある。しかし、そのような形で一国内に「平和」が出来上がってその抑圧に苦しんでいるのだけれど、ひとたび目を国外に転じると、そこは相変わらずの「自然状態」である。そこでは頻発する戦争があって、人々はその戦争にも苦しめられる。そういうことです。

 戦争状態を克服するために抑圧を受け入れることは間違っているかもしれないけれど、しかしそうした抑圧的な政府もないような状態(つまり国家間関係)においては、戦争によって苦しめられる。これがなんという人間にとっての不幸ではないか、というわけです。


●ルソーは安易なコスモポリタニズムには批判的だった


川出 さて、そこで一見分かりやすい解決方法が考えられるわけです。これは、ルソー自身がそう言っているわけではなく、ルソーを読んでいる研究者が「ルソーがここで言わんとしているのはこういうことではないか」ということを与える1つの解答があるのです。

 それは何かというと、ホッブズの議論のルソー版といったようなものです。ホッブズの場合には抑圧的な専制国家が支配するという形で決着しているから、ルソーにとって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
歌舞伎はスゴイ(2)市川團十郎の何がスゴイか(後編)
歌舞伎十八番を定めた七代目市川團十郎、一番モテた八代目
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…大大名たちを魅了した秀長の器量とは?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑