平和の追求~哲学者たちの構想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
平和のための「国家連合」。このアイデアの源はサン=ピエールなのだが、現在ではカントの著作『永遠平和のために』が起源だともてはやされることが多い。その理由としては、「なぜ国家連合が必要なのか」「そもそもなぜ平和が必要なのか」に対して、明確な答えをカントが著書『永遠平和のために』の中で述べているからである。その答えとは何か。今回は、カントの思想に触れながら、さらにカントやサン=ピエールの理想と現代の「国家連合」の現実とを比べてみる。(2025年8月2日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV・アカデミー編集長)
時間:9分54秒
収録日:2025年8月2日
追加日:2025年12月22日
≪全文≫

●サン=ピエールとカントの「決定的な違い」とは?


川出 さて、そろそろフィニッシュです。いろいろな人を登場させて、またカントかよという印象もありますので、ここは少し駆け足でお話ししたいと思います。

 実は標準的なテキストでいうならば、サン=ピエールはそれほど重視されていません。まさにカントの『永遠平和のために』という作品が、国際連盟、国際連合、EUの起源であるともてはやされるところがあります。サン=ピエールもかわいそうなのです。非常に厚い本を書いている。(一方)カントは、岩波文庫でもうペラペラで、すごく短い。そして彼は明らかにサン=ピエールのことを知っているわけです。フランス研究者としては「カントはずるい」というところもあって、少し意地悪な気分にもなります。

 ただ、そうはいっても、サン=ピエールとカントで、1点だけ決定的に違うところがあります。それは、カントの名誉のためにいっておかなければいけないし、おそらく平和の問題を考えるときに、今でも重要な問題だと思います。なぜそもそも連合国家(国家連合)をつくって、紛争を武力ではなく法によって解決する必要があるのか。その根拠、その動機です。「国際連盟をつくろう、国際連合をもっと改革してやっていこう」「なぜ?」という、その部分です。

 サン=ピエールの議論は、先ほどもご紹介しましたように、すごく分かりやすい。「平和は誰にとっても利益になる」という確信です。

 なんとなく実感としては「そうかな」と思うのだけれど、でもこれは本当なのか。場合によっては戦争(武力に訴えた)のほうが利益になる局面もある。端的にいえば、武力において優越している国家にとっては、そんな面倒くさいことをするより、さっさと武力行使してしまったほうが国益の追求になるという局面があって、それが何度も何度も繰り返されているという状況があるので、長期的には平和は誰にとっても利益になるのかもしれないけれど、利益の論理だけでは結局、先に進めない。

 サン=ピエールのジレンマは、勢力均衡やリアリズムなどといわれているものと(彼の平和構想は)実はそれほど違わないところがあるわけです。「どの国も国益追求したいという発想だ。真の国益とは戦争がない状態なのだ」とサン=ピエールは言うのだけれど、現実にはそんなに簡単ではない。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「学びたい」心のための環境づくり
人間だけが大人になっても「学び」を持続できる
長谷川眞理子
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(32)鎌田東二先生の法華経講義解説-1
【10min名作探訪】鎌田東二先生の『法華経』講義の核心ビジョン
テンミニッツ・アカデミー編集部
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(5)「原則なし」の日本
世界は「原則」でできているが、日本は「原則はなし」にする
橋爪大三郎
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(7)AI活用の落とし穴
AIへの不安と懸念…だからこそ「教養」が必要になる
渡辺宣彦
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留