テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化

日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化

田口佳史
東洋思想研究者
情報・テキスト
大転換期の真っ只中にいるわれわれにとって、日本の特性を強みとして生かしていくために忘れてはいけないことが二つある。一つは日本が森林山岳海洋島国国家であるというその地理的特性。もう一つは、日本文化の根源としての縄文文化だ。日本文化の特徴は繊細さにあると思いがちだが、そのベースにあるのはエネルギッシュで創造性豊かな縄文文化である。(全11話中第1話)
時間:10:44
収録日:2020/02/05
追加日:2020/09/16
キーワード:
≪全文≫

●日本文化を学び直す意義


 講座を始めますが、まず言いたいのは、大転換期の真っ只中にあるわれわれが、これを「大きなチャンスが来た」と見るべきだということです。

 チャンスはどこにあるのかというときに、実力というものはどこから発揮されるべきかといえば、それはアイデンティティ、要するに自分らしさが発揮されるかどうかという部分であります。芭蕉風にいえば、「不易流行」ということです。ですから、不易というものをまずしっかり自覚するということが非常に重要なんじゃないかと言っているわけです。

 そういう意味で、日本的ということを皆さんの強みとしてどう認識して、それをどう発揮させるかということを突き詰めていきたいというのが、この講座の基本で、今回は「日本文化を学び直す」ということについてお話いたします。

 日本文化といえば、これは「わび・さび」文化に代表されるのですが、前回のシリーズ(「日本の特性とは何か」シリーズ)で触れましたように、日本の地理的特性というものが非常に重要でありまして、地理的特性は、類似したものが他国にはない。つまり、自分の国だけがそうした特性の地域にいるわけでありまして、そこから導き出されているその特性というものがとても重要なものです。私は森林山岳海洋島国国家、簡単にいえば、森林山岳性、それからユーラシア大陸の東端というこの地理的特性から来るものをぜひ忘れてもらいたくないと思うんです。


●エネルギッシュで創造性豊かな縄文文化があったことを忘れてはいけない


 もう一つ、根源的に日本を語る場合に、忘れてならないものがあるんですね。それは縄文です。

 日本という国の文化、それこそ世阿弥、千利休、松尾芭蕉、小堀遠州、そういうものをずっと叩けば叩くほど、深いところにはありありと縄文のエネルギーというものがあるわけですね。滅多に見えていないけれども、いってみれば、何かのときにグッと浮いてくる。非常にベースをなす色彩で、です。それは滅多にあらわにならないけれども、あらわになった瞬間には非常に大きなものを感じさせる。そういうものが、縄文という頃の日本の文化といっていい。

 縄文(時代)というのはご承知の通り、どういうものかといえば、紀元前1万年前後から紀元前3~4世紀頃まで、非常に長期間続いたものでありまして、そういうものがすぐになくなってしまうということはないんです。あえていえば、弥生(時代)になって農耕とともに来る、この文化はどちらかというと繊細で、ある種その後の日本というものを形づくるようなものなんですけど、その前に非常にエネルギッシュで、非常に精力的で、さらに創造性豊かな縄文の文化があったということは忘れてもらいたくないんです。


●東日本に顕著な縄文文化の特性


 特に東日本です。日本の文化というと、どうしても西日本中心に考えますが、縄文というものを形づくっている大きな特性として、非常に高度な遺跡は東日本、あるいは北日本にといってもいいんですけど、そういうところに非常にあるのです。どうしてなのかというと、たぶん地理的に北からいろいろな人間が交流するということがたやすかっただろうと思うんですね。

 ですから、そういう意味で北方民族の慣習、あるいはそこで培った生活文化のようなものが日本にどんどん出てきている。2019年、縄文遺跡を見に千葉に行ったのですが、そこでいろいろなところのものを拝見すると、非常にびっくりすることが多かった。どういうところにびっくりしたかというと、溢れんばかりのエネルギーとか、生命力とか、こういうものが赤裸々に出ているところです。そこには、ちょっと抑えて、という、そういうところはないわけです。

 だから、日本というと巧緻で非常に繊細で、どちらかというと神経質で線の細い、しかし非常に巧みで繊細な文化だということを、皆さん、挙げられると思うんですけど、そうじゃない。そのベースには、ダイナミックでエネルギッシュな縄文文化というものがあるんだということを忘れてもらいたくないんですよ。


●生命線を表す「縄」の多様な機能


 縄文の「縄」ですが、改めて「なぜ縄なんだろう」ということを考えてみると、縄というものが当時の人々の生活のあらゆる部分に絡んでいる。つまり、縄というもの自体が当時の人々の生命線を表しているといっていい。そういう発見がありました。

 縄というものは、まず「むすぶ」という機能がありますよね。これはどういうことか。約束する、ということです。ですから、昔の約束事というのは今の契約書のように、縄をむすび合って誓い合う、そういうものであります。

 それから「しばる」ということがありますよね。これは、獲物の自由を奪ってしまうということで、自分のものだということの証左としてしばるというこ...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。