●日本文化を学び直す意義
講座を始めますが、まず言いたいのは、大転換期の真っ只中にあるわれわれが、これを「大きなチャンスが来た」と見るべきだということです。
チャンスはどこにあるのかというときに、実力というものはどこから発揮されるべきかといえば、それはアイデンティティ、要するに自分らしさが発揮されるかどうかという部分であります。芭蕉風にいえば、「不易流行」ということです。ですから、不易というものをまずしっかり自覚するということが非常に重要なんじゃないかと言っているわけです。
そういう意味で、日本的ということを皆さんの強みとしてどう認識して、それをどう発揮させるかということを突き詰めていきたいというのが、この講座の基本で、今回は「日本文化を学び直す」ということについてお話いたします。
日本文化といえば、これは「わび・さび」文化に代表されるのですが、前回のシリーズ(「日本の特性とは何か」シリーズ)で触れましたように、日本の地理的特性というものが非常に重要でありまして、地理的特性は、類似したものが他国にはない。つまり、自分の国だけがそうした特性の地域にいるわけでありまして、そこから導き出されているその特性というものがとても重要なものです。私は森林山岳海洋島国国家、簡単にいえば、森林山岳性、それからユーラシア大陸の東端というこの地理的特性から来るものをぜひ忘れてもらいたくないと思うんです。
●エネルギッシュで創造性豊かな縄文文化があったことを忘れてはいけない
もう一つ、根源的に日本を語る場合に、忘れてならないものがあるんですね。それは縄文です。
日本という国の文化、それこそ世阿弥、千利休、松尾芭蕉、小堀遠州、そういうものをずっと叩けば叩くほど、深いところにはありありと縄文のエネルギーというものがあるわけですね。滅多に見えていないけれども、いってみれば、何かのときにグッと浮いてくる。非常にベースをなす色彩で、です。それは滅多にあらわにならないけれども、あらわになった瞬間には非常に大きなものを感じさせる。そういうものが、縄文という頃の日本の文化といっていい。
縄文(時代)というのはご承知の通り、どういうものかといえば、紀元前1万年前後から紀元前3~4世紀頃まで、非常に長期間続いたものでありまして、そういうものがすぐになくなってしまうというこ...