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「惟神の道」とは日本人にとって何を意味するのか

日本文化を学び直す(11)「惟神の道」と天皇の存在

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
日本は多様な外来文化も採り入れながら、霊力、神、ムスビといったものを創造していくという伝統を縄文時代から維持してきた。それを可能にしてきたのが天皇の存在である。「惟神の道」という言葉があるが、神さながらの生き方を体現する天皇が、日本人の鋭い感性、深い精神性、ダイナミックでエネルギッシュな創造性を象徴する存在としてわれわれにはある。田口氏はそう語り、今回のシリーズ講義を締めくくった。(全11話中第11話)
時間:09:00
収録日:2020/02/05
追加日:2020/11/25
キーワード:
≪全文≫

●日本の神信仰が1万年近く絶えないのはなぜか


 結局、今回の講義シリーズで申し上げた古代から始まる霊力とか、アニミズムとか、さらにいえば、神信仰、つまり神の発見とか、また産霊神(むすびのかみ)というものを創造していくという、そういう伝統が、縄文まで入れれば1万年近くずっと日本には流れているわけですね。

 それがどうして絶えないのか。あるいはそれがどうして変わらないのか。仏教だって変わっている。あるいは仏教を国是としている国もある。また儒教を国是としている国もある。そうした、いってみれば強烈な思想哲学が入ってきながら、神道が神の発見というところからずっとわれわれに馴染み深いものとして、日本のバックグラウンドにあるのはなぜなのか。もし、そこに何か象徴的なものが非常に色濃くなければ、変容してしまいます。だから、そうならないのはなぜなのかと考えて、そこにバッと登場するのが天皇なのです。


●日本の特性を体現する存在としての天皇


 では天皇とはどういう存在なのか。また神道とはそもそも何を説いているものなのか。分かりやすくいえば、「神さながらに暮らしてくれ」ということです。「神さながらの生き方」を日本人の最高の到達点に置いて、これを「惟神の道(かんながらのみち)」と言っているわけです。「神さながらの道」ということです。

 「ちょっと待ってくれよ」と。「人間は人間だから、神になってしまったら意味がないのではないか」と。では、人間として神のように暮らすとはどのように暮らすことなのか。どの時代でも、多くの日本人の疑問はそこに集まってくると思うのですね。そんなにいうなら、「神さながらに生きている人間を出して、見せてよ」と思うのです。

 そこで、「はい、この人です」と言って登場しているのが天皇です。ですから、そういう意味でわれわれの文化というか、日本というものを決定づける最大の要点として、天皇という存在があるのです。今回の講義シリーズでずっと申し上げてきた縄文から続くダイナミックでエネルギッシュな創造活動。それから、鋭い感性と深い精神性というわれわれの一つの特性。つまり、それらを全部見せてくる存在こそが、具体的にいうと天皇ということで、われわれと、そして時代とともに生きている、そういう存在がわれわれにはあるということです。

 そんな国は他にありますか。そこが驚異的だ...
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