●三重大学には世界的にも珍しい国際忍者研究センターがある
―― 皆さま、こんにちは。本日は、三重大学国際忍者研究センター准教授でいらっしゃいます、高尾善希先生をお招きいたしまして、「忍者とは何か」というテーマでお話しいただこうと思っております。
先生がいらっしゃるのは三重大学の国際忍者研究センターというところです。こちらはなかなか珍しい研究センターだと思うんですが、これはいつぐらいにできたんですか。
高尾 2017年の7月にセンターが組織的に立ち上がりまして、それとともに、私は三重大学に着任しました。大学組織としては、日本だけではなく世界的にも珍しいところだと思うんですね。インターネットで見ますと、国立大学なのに国民の税金を使ってふざけたことをやっているとか、そういうご批判も書いてあったりするんですけれども、いたって真面目な研究施設でございます。
―― 大学で忍者の研究センターは三重大学だけだと思うんですけど、全国で忍者の研究をされている専門の先生はだいたいどのくらいいるんですか。
高尾 大学の研究者としてはそんなにいないですね。三重大学には、私の同僚で山田雄司先生と吉丸雄哉先生がいらっしゃるんですが、それぞれ中世怨霊の研究をやっていたり、江戸時代の式亭三馬の文学の研究をしていた先生なんですが、最近になって忍者の研究を大学からの指示でやっています。
ですので、三重大学のなかでも忍者の研究をやっている研究者はそんなにおりませんし、全国的にも忍者中心でやっている先生というのはそんなにいらっしゃいません。でも、いろいろな研究をやっているなかで、ところどころ忍者、忍びが出てくる研究はあるんですね。そこまで含めて見ると、まあまあいるかなという感じがします。例えば、幕府の役人の研究で、お庭番の研究をやっていらっしゃる先生とか、あるいは戦国時代の研究をしていらっしゃる方で、戦い方の研究のなかで忍びの史料をご覧になっている先生とか、そういう方はいらっしゃいます。
だから何をもって忍者専門の研究者かというのは難しいんですが、史料はいろいろありますので、そうしたものの研究をしている方まで数えていうと、結構いるんじゃないかなと思います。
●忍者は国際的な広がりを持った研究テーマ
―― では、これから戦いにおいていろいろと詳しくお聞きしますけれど、当然忍者というのは、忍びですよね。となると、スパイであり、間諜であり、破壊工作を含めいろいろなことをやるわけで、これは戦いになれば必ずなくてはならない存在ということになりますが、そこに光を当てるということは非常に大事なことだと思うんですが、いかがでしょう。
高尾 そうですね。
―― もう一つ、国際忍者研究センターという名前でいうと、「国際」が付いているところが一つ、ミソなのかなと。世界的に忍者というのは、日本人が思っている以上にとても人気がありますよね。
高尾 そうですね。私、実は海外旅行をしたことがなくて、外国語もそんなに堪能ではないんだけれども、職場としては「国際」という名前が付いています。「国際」というのはどういうことかというと、国際規模で研究をしようということです。おっしゃったように、忍者というのは非常に国際的な広がりを持った研究テーマなんですね。
海外には、忍術書を読み解いて日本人よりも先に忍術書の外国語訳を出す研究者もいたりします。それから、フィクションの忍者ですね。例えば、アメリカで「ニンジャタートルズ」という映画がありますけれども、そうした忍者に着想を得て模倣した映画がありますから、フィクションの忍者の研究をするときには、やはり国際規模で研究しなきゃいけないということで、「国際」という名前が付いているということなんです。
●今、日本人も忍者について再び考え直すときに
―― 聞いた話なんですが、世界規模で展開している自動車メーカーさんが、世界のディーラーで売ってくださっている方を集めて、日本で研修をした時に何が一番喜ばれたかというと、忍者ショーだったそうです。世界から来た人たちが「ついに日本で忍者に会った」と大喜びをしたということで、「あれほど喜ばれたことはありませんでした」ということを聞いたことがあります。
だから海外における忍者熱と、日本における忍者の需要というものに、面白いギャップみたいなものがあるなというのを感じたことがあります。ということで、忍者というものにますます光を当てていく必要もあるんだろうなと。これは世界でいろいろ日本文化を説明するなか、外国の方が忍者に興味を持っている可能性は、アニメとか、先ほど話の出た「ニンジャタートルズ」も含めて、あると思うからで...