「忍者」とは何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
戦国時代の「忍び」とはどのような存在だったのか
「忍者」とは何か(2)「忍び」技術を持った専門集団
歴史と社会
高尾善希(三重大学国際忍者研究センター 准教授)
黒装束に十字手裏剣を投げるといった一般的な忍者のイメージは、実は江戸時代後期につくられたもので、実像とは異なっている。実際の忍者は、情報探索や斥候、奇襲、守衛など特殊任務に就いていた足軽で、彼らはその土地と結びつき、専門技術を生かし戦いの下支えをしていたのである。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分27秒
収録日:2019年8月27日
追加日:2020年1月23日
≪全文≫

●フィクションの忍者のイメージは江戸時代後期につくられた


―― 実際のところ、戦国時代の忍びというのがどういうような存在だったかというところなんですけれども、これは武士のなかに位置づけられる形になるわけですね。

高尾 まず、前回フィクションの忍者の話をしましたけれども、彼らはだいたい黒づくめの装束を着ていますね。頬被りして、上は袂(たもと)のない筒袖の和服を着て、下はカルサンと呼ばれる袴です。カルサンという袴は、足の先が細くて紐でまとめてある袴のことですが、それを着て、石垣をよじ登ったり、屋敷のなかに忍び込んだりして、危険が迫ると十字の手裏剣を投げるというのが、皆さんが思い浮かべる忍びの姿なんじゃないかなと思います。

―― よく時代劇に出てきがちなイメージですね。

高尾 はい。こういうのは江戸時代から現代にかけてだんだんとつくられてきたフィクションの忍者の姿ということになります。ですので、そのことも非常に重要な研究対象にはなるんですが、これからお話しする史実としての忍者、実在した忍者とは違うということになります。黒づくめの格好の姿は江戸時代後期にだんだんと物語の挿絵のなかで成立してくるということです。


●実は実用性に乏しい十字手裏剣


―― 江戸時代後期なんですね。

高尾 はい。江戸時代後期です。ですから、それ自体古い歴史を持っています。十字手裏剣には星形になっているものもあり、十字手裏剣とか、星形手裏剣とかといわれますが、実際、江戸時代に成立した忍術書にはそういう手裏剣のことが書いてあるんです。だから、実際存在しなかったとは言えないけれども、その手裏剣を持つところがない。つまり把手がないんです。だから実在したかどうかはあやしいというか、実用性がないんじゃないかと言われているんです。

 実際、手裏剣には棒手裏剣というものがあります。棒のような形になっていて、手に持って投げる。このことを「打つ」というんですが、そういうものは一般的にあるんですね。だから、十字形とか星形といったものはなかなか実用に適さなかったんじゃないかと考えられているんです。

 棒手裏剣自体は、武士一般の護身具で、忍者だけが使っていたものではないということなんです。だから忍者といえば、星形・十字手裏剣という、切っても切り離せない関係だと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子