習近平中国の真実…米中関係・台湾問題
経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換
政治と経済
垂秀夫(元日本国駐中華人民共和国特命全権大使)
3.戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
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「習近平中国」における内政において、最も重要な特徴は国家戦略目標の転換だと垂氏は言う。鄧小平時代の経済発展から国家の安全へ舵が取られ、「富より安全」を社会秩序の根底とするのが習近平中国の方向性となる。国家安全委員会が設立された2015年以来、中国の外交政策も同様の路線を踏襲している。(全7話中第2話)
時間:9分01秒
収録日:2025年7月1日
追加日:2025年10月2日
収録日:2025年7月1日
追加日:2025年10月2日
≪全文≫
●「1日あたり200~300件の暴動やデモ」という状況から
さて、(「習近平中国」における内政の)三つ目の特徴は、現代的意義として一番重要なものです。私は世界のチャイナウォッチャーを全てチェックしたわけではありませんが、日本のチャイナウォッチャーの中ではごく限られた人しか指摘していない(私ほどしている者はいません)という不思議な現象が起きています。この三つ目が、実は最も重要です。
これは何かというと、私の言葉では「国家戦略目標」すなわち共産党の戦略目標が変更されたということです。
鄧小平時代の目標は豊かになるということで、違う言葉でいえば経済発展でした。当時、鄧小平は「一つの中心 二つの基本点」と言いました。
「一つの中心」とは経済発展で、経済発展というのは高い経済成長を求めることです。「二つの基本点」のうちの一つは改革開放です。もう一つが何かはいろいろいわれますが、私の言葉で最重要ポイントを説明すると、中国共産党による指導です。中国共産党の指導によって改革開放を通じて高い経済成長を求めるというのが鄧小平時代の国家戦略目標だったわけです。
ところが、これでずっとやってきたところ、江沢民や胡錦濤の時代になるといろいろな問題が起きてきました。あまり詳しく話し出すと非常に長くなるので簡単にしか言いませんが、まず経済成長そのものがだんだん右肩下がりになってくる。高い経済成長を求めているにもかかわらず、だんだん右肩下がりになってきたのに付随して、三つの問題が起きてきます。
一つ目は腐敗・汚職がおそろしく深刻になったこと。二つ目は経済成長のためにあらゆるものが犠牲になり、中でも環境破壊が深刻になったこと。三つ目は何かというと、格差がどんどん広がったことです。こういう状況になったため、最後のほうでは暴動やデモが多発するようになりました。
胡錦濤時代の最後のほうになると、彼らの発表した数字によると、2005年には1日あたり200~300件の暴動やデモが起きています。こうした状況の中、胡錦濤自身も2008年12月18日に「中国共産党の政権与党としての地位は永遠でも不変でもない」と対外的に発表することがありました。要は、政権党としての中国共産党の立場は変わってしまうかもしれないという危機意識を発表したことがある。そういう状況の中で、...
●「1日あたり200~300件の暴動やデモ」という状況から
さて、(「習近平中国」における内政の)三つ目の特徴は、現代的意義として一番重要なものです。私は世界のチャイナウォッチャーを全てチェックしたわけではありませんが、日本のチャイナウォッチャーの中ではごく限られた人しか指摘していない(私ほどしている者はいません)という不思議な現象が起きています。この三つ目が、実は最も重要です。
これは何かというと、私の言葉では「国家戦略目標」すなわち共産党の戦略目標が変更されたということです。
鄧小平時代の目標は豊かになるということで、違う言葉でいえば経済発展でした。当時、鄧小平は「一つの中心 二つの基本点」と言いました。
「一つの中心」とは経済発展で、経済発展というのは高い経済成長を求めることです。「二つの基本点」のうちの一つは改革開放です。もう一つが何かはいろいろいわれますが、私の言葉で最重要ポイントを説明すると、中国共産党による指導です。中国共産党の指導によって改革開放を通じて高い経済成長を求めるというのが鄧小平時代の国家戦略目標だったわけです。
ところが、これでずっとやってきたところ、江沢民や胡錦濤の時代になるといろいろな問題が起きてきました。あまり詳しく話し出すと非常に長くなるので簡単にしか言いませんが、まず経済成長そのものがだんだん右肩下がりになってくる。高い経済成長を求めているにもかかわらず、だんだん右肩下がりになってきたのに付随して、三つの問題が起きてきます。
一つ目は腐敗・汚職がおそろしく深刻になったこと。二つ目は経済成長のためにあらゆるものが犠牲になり、中でも環境破壊が深刻になったこと。三つ目は何かというと、格差がどんどん広がったことです。こういう状況になったため、最後のほうでは暴動やデモが多発するようになりました。
胡錦濤時代の最後のほうになると、彼らの発表した数字によると、2005年には1日あたり200~300件の暴動やデモが起きています。こうした状況の中、胡錦濤自身も2008年12月18日に「中国共産党の政権与党としての地位は永遠でも不変でもない」と対外的に発表することがありました。要は、政権党としての中国共産党の立場は変わってしまうかもしれないという危機意識を発表したことがある。そういう状況の中で、...
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