AI時代に人はその技術とどう付き合っていくべきか。そして、われわれはAIからの情報を本当に「信じる」ことができるのか。また、人々が「物語」を求める中で、科学がやるべきことは何なのか。聴講者との質疑応答を通じて考える。(2025年5月15日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全9話中第9話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●AIとどう付き合っていくべきか
―― ということで、皆さまのご質問をお受けできればと思っています。
【質問】
自然人類学の世界では、人工知能の存在をどう捉えているでしょうか。別物としてまったく無視されているのか、あるいはヒトの行動に影響してしまう可能性やヒトが変異してしまう可能性もあると興味を持っているのでしょうか。
長谷川 人工知能(AI)には問題は2つあります。SNSを代表とする簡便にコミュニケーションが取れるITツールというものが、人間にどういう影響を及ぼしているかというのはすごい(問題)です。
それは今のところ、いいこともある。(例えば)少し何時何分遅れますよとか、何かがサッとできるとか、全然知らない人とつなぐことができるとか、いいこともあるのです。
特にティーンコホートの(研究で)10歳の子どもをずっと追跡してきて分かるのは(編注:《今どきの若者たちのからだ、心、社会》講義を参照)、思春期にものすごく周りから影響を受けやすいという時代に、SNSを使っている時間が長いことと自分を不幸に感じるということが完全に相関する(ということです)。
だから、(つまり)長く使う子どもほど自分は不幸せだと思って、ウェルビーイングが良くないのです。それは、男の子より女の子のほうが強いのです。それは、女の子のほうが周りからの刺激とか、周りと比べるということがあの時期、非常に強いからです。特にやせ願望の強さとSNSの視聴時間はもう完全に相関しました。
なので、そういう意味で、ああいうIT技術が一般にもすごく悪い影響はあるのだけれど、思春期の、特に女の子にすごく悪い影響を与えて、ウェルビーイングを下げているというのは明らかだと思います。
それと生成AIというか、ああいうものとどう付き合うかはまた別問題で、人類学とか心理学とか、人間を研究する側からすると、AIは結局人間の脳みその前頭葉で計算しているところだけでしょう。それをすごい速度でやっているということです。ただし、脳みそは体との関係とか、感情との関係とか、過去の経験とか、そういうことを全部すごいマルチタスクで並列でやっているので、(AIは)それと同じことをできません。
(では、AIは)何でやっているかというと、人がしゃべったこと、書いたことをデータとして取り入れて、その相関関係から何かを言っているのでしょう。だから、私...