ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ローマ共和制の「独裁者を許さない」原則とは?
ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ(4)共和制500年の第一原則
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏によるローマ帝国形成への経緯をたどる連続講義。共和制国家として500年の伝統を持つローマが、その第一原則として徹底的にこだわったのは「独裁者を許さない」ということだった。この原則の前では、あの英雄スキピオ、そしてカエサルさえも屈せざるを得なかった。(全7話中第4話)
時間:9分19秒
収録日:2016年12月16日
追加日:2017年4月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマ共和制の伝統-単独の支配者を許さない


 カエサルは、いわばローマ世界の中で唯一の権力者にのしあがっていきます。これまでも繰り返しお話ししましたが、ローマは共和制の伝統を500年間守ってきました。

 共和制とは何かというと、第一の原則は「独裁者を許さない」ということです。王や君主といった単独の支配者を許さない。そういうことをローマ人は500年にわたって心掛けてきました。ローマは、そうした支配者の嫌な面をそれまでの王制期の250年の歴史の中で経験していましたから、繰り返し英雄が現れてくると、その英雄が最終的には何となく影が薄くなっていったり、場合によっては敵対勢力からやっつけられて裁判沙汰を起こされたり、といったこともあったのです。


●英雄スキピオと反対勢力


 その典型が先ほどお話しした、ハンニバルを打ち破った大スキピオです。紀元前の202年のことですが、スキピオは、徹底的にローマ人が痛めつけられたハンニバルを最終的にザマの戦いで打ち破ります。それまでハンニバルに非常な苦汁をなめさせられたということもあり、若きスキピオが登場してハンニバルを打ち破ったということは、ローマにとっては大変な功績であり、そのために彼は英雄に祭り上げられていくのです。

 すると、今度はそれに敵対する勢力としてカトー一族が登場します。その最初の代表的な人物に大カトーと呼ばれる人がいます。この人はスキピオとほとんど同年代ですが、スキピオ、グラックス家が非常に進取の気性に富んでいたのとは対照的に、カトー一族は非常に国粋主義的な保守派の中核のような人たちでした。

 このカトー一族、あるいは彼を支持する人たちは、スキピオを非常に嫌っておりました。その上、スキピオはローマ国家を救済した英雄になるので、繰り返し「こいつがまた単独の独裁者になる。王になる」と言って、その危険を皆に吹聴したのです。

 スキピオも自分が表に立って行動すると、いつもそういう目にさらされました。スキピオの兄弟が軍隊を率いていると、いわばそのサブリーダー、あるいは顧問格でも(一族の者がその中に)入っているので、そういう軍隊を率いたスキピオの一族を、反対勢力が「不法な形でいろんな財産を得ようとした」、いわば私腹を肥やしたということで告訴するのです。


●独裁者に対するローマ人の強固な警戒心


 スキピオは、最終的には犯...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ