ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ
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歴史を変えたカエサルの魅力とカリスマ性…その逸話
ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ(5)カエサルのカリスマ性
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏によるローマ帝国に関する連続講義。本村氏はカエサルを「歴史上5本の指に入るほどのカリスマ」と評価する。その魅力はいったいどこにあるのか。いくつものエピソードをもとに、その頭脳や強さだけではないカエサルのカリスマ性、人間的魅力に迫る。(全7話中第5話)
時間:12分09秒
収録日:2016年12月16日
追加日:2017年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●10代にしてスッラを心底おびやかしたカエサル


 カエサルという人は一種のカリスマ性を持っており、歴史の中でもおそらく5本の指に入るぐらいの大変な人物だったのではないかと思います。いろいろな伝説が残っています。例えばマリウスとスッラが対立していた時、カエサルは10代の若者で、マリウスの縁者に連なる所にいたわけです。そのためスッラからは、マリウス派の一派だと見なされていました。ですから、マリウス派を制圧していく過程において、カエサルは若者でしたが、やはり「殺せ」というぐらいの指令を出すわけです。

 ところが周囲の人間は「いや、まだカエサルは若いから、(殺すほどの)ことはない」と言って、それを止めるのです。その時にスッラは、「あいつの中にはマリウスが何人も潜んでいるぞ」と言ったそうです。それが本当にスッラの言葉だったかどうかは別にして、そういう伝説が残るほどの要素をカエサルが持っていたということです。


●弁論術の伝統を持つ欧米、論じることが苦手な日本


 それから彼は、政治的天才の中でも特に弁論術に優れていたといわれています。弁論術はギリシャ・ローマ時代から培われてきた人を説得する技術で、欧米世界では二千数百年の伝統を持っています。人を説得するためにはそれなりの技術がいるということで弁論術が磨かれていき、現代においても教育の中でディスカッションし、相互に意見を交わしていく技術として使われているのです。

 ところが日本人は、そうした技術をほとんどと言っていいぐらい持っていないのです。最近でも英語教育において、英語をもう少し磨いてディスカッションするようにと指導しているらしいのですが、なかなかうまくいかないといいます。私は、そもそも英語をやる前に日本語でちゃんとした議論ができていない人たちがいくら英語をやっても、それはできないのではないかと思います。

 もちろん、そこには日本的な良さというものが関係します。日本には「和をもって尊しとなす」や「沈黙は金」、あるいは腹芸というものがあります。議論を尽くして唾を飛ばし相手をやっつけて納得させるということが日本人は不得意で、うまくありません。それは良いとか悪いとかいうよりも、そういうものによって培われてきている日本人のメンタリティがあるのです。その良さを生かした上で、ヨーロッパや中東、あるいはインドの人たちを相手にや...

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