ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カエサルはなぜ暗殺されたのか?
ローマ帝国への道~ローマ史講座Ⅲ(6)「ブルータス、お前もか」
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏によるローマ帝国に関する連続講義第6話。今回は、多くの人間的魅力、カリスマ性をもったカエサルが、なぜ反対勢力から危険視され、暗殺されるに至ったのかという点を掘り下げる。そこには、カエサルといえども抗えなかった共和制王国の断固としたシステムがあった。(全7話中第6話)
時間:6分34秒
収録日:2016年12月16日
追加日:2017年4月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●平時の執政官と非常時の独裁官


 (前回お話したように)非常にカリスマ的な人間だったカエサルですが、そうであるからこそ、かえって敵、つまり彼に反感を持つ側からすれば、やはりある種の危険を感じていたのではないでしょうか。

 ではカエサルはなぜ、危険視されていったのか。ローマの制度の中では本来、コンスル(執政官、統領のこと)が2名いて、この2名が交互にリーダーシップを奮っていました。つまり1人の指導者にしないということが、共和制王国を守っていく段階でのローマ人の知恵でした。コンスルは任期1年、それも2人いるという形でお互いに牽制し合うということで、リーダーに対して、ある程度の枠をはめていたのです。

 しかし、それでも非常時にはそういう形でやっていては事態が円滑に進みませんから、ディクタトールと呼ばれる独裁官を設けていました。それも半年限定でディクタトールになることができたのです。ただ、それは得てして戦時の場合です。それまでも何度かディクタトールになった人物がおり、カエサルもその単独の支配者になったのです。


●終身の独裁官を宣言、そして死へ


 しかし、ポンペイウス派、いわゆる閥族派を戦争で叩きつぶしても、やはりまだ散らばっていた敗残兵たちが残っていますし、共和制を守ろうとする人たちは根強くローマ社会に残っていました。その人たちを最終的に鎮めていくために、カエサルも独裁官になっていなければなりません。彼は最初、1年ずつ任期を延長していく形にしました。そうして10年ほど独裁官であり続けた後、最終的には終身の独裁官になると宣言しました。終身の独裁官ということは自分を事実上のキング、あるいは専主という存在として認めることになるため、人々から非常に反感を買うことになります。そして、紀元前44年3月15日、彼は元老院の会議に出かけて行き、最終的に殺されてしまいます。

 この社会には、当たり前のようにいろいろな占い師がいました。この時もちょうど占い師がいて、その占い師がカエサルに、以前から「3月15日までは気を付けてください」と言っていたそうです。そして、3月15日の当日になり、カエサルが家を出かけようとした時、その占い師が「3月15日までは気を付けてくださいと言ったじゃありませんか」と言うと、カエサルは「3月15日はもう来たじゃないか。大したこともなく今日が来たじゃないか」と答えます。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治