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アウグストゥスの称号を得たオクタウィアヌスは政治的天才

ユリウス・クラウディウス朝~ローマ史講座Ⅵ(1)初代の悩み

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
アウグストゥス
早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏が、ローマ帝国初期ユリウス・クラウディウス家の5人の皇帝を中心に古代ローマ史を解説。カエサル暗殺後、アントニウスとの対立を制したオクタウィアヌスは、アウグストゥスの称号を得て、ローマ共和制の伝統を守りながらも数々の改革に着手する。優れた為政者であったアウグストゥスだが、彼の弱点は直系男子の後継者がいないという点にあった。(全6話中第1話)
時間:16:21
収録日:2017/08/07
追加日:2017/09/10
カテゴリー:
≪全文≫

●有事に能力を発揮したマルクス・アントニウス


 古代ローマはカエサルの暗殺というショッキングな出来事によって、非常に大きな転換期を迎えることになります。それまで500年にわたって共和制の伝統を持っていたローマに対して、単独の支配者が君臨するということは、ローマ人にとっては大変抵抗のあることだったので、カエサルもその疑いをかけられて、暗殺されます。

 その後、後継者としてマルクス・アントニウスとオクタウィアヌス、それからレピドゥスを加えた3人による三頭政治が行われたのです。やがてレピドゥスが脱落し、アントニウスとオクタウィアヌスの抗争が繰り広げられるのですが、ローマが単独の支配者による独裁的な体制が出来上がっていくまで、十数年という期間がありました。その中でカエサルの最大の弟子であったマルクス・アントニウスは、人間としては非常に面白い男でした。彼は平時に行政や訴訟といったことを任されると何となく怠けてしまうというところがあったのですが、戦時になると大変な活躍をするという、ある意味ではとても面白い人物だったのです。

 

●アクティウムの海戦でオクタウィアヌスは単独の支配者へ


 ご承知のように、アントニウスは地中海世界の東の方を権力基盤としており、オクタウィアヌスと対抗していく中で、エジプトにいるクレオパトラと結び付いていきます。のちにシェイクスピアの劇『アントニーとクレオパトラ』で取り上げられるような話になったわけですが、平時にはクレオパトラと毎日のように豪華な宴会を催して享楽的な生活を送り、戦士としての彼の勇ましさというものをだんだんと失っていくところが晩年にはありました。

 そして最終的には、オクタウィアヌスとの対決として紀元前31年にアクティウムの海戦があり、ここでクレオパトラはだらしなく自分の船団を連れて逃げてしまいますが、アントニウスもクレオパトラの後を追って逃げていきます。アクティウムの海戦は地中海の歴史、あるいは世界史の中でも非常に大きな意味を持つ戦いだといわれている割には、海戦そのものとしては大したこともなく、戦争らしきものがほとんどなく終わってしまいます。

 結局クレオパトラとアントニウスはエジプトに逃れていきますが、しょせん敗残兵ですから、やがて追い掛けてきたオクタウィアヌスの手中に落ちて、2人とも自害に追い込まれていくことになるのです...
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