ユリウス・クラウディウス朝~ローマ史講座Ⅵ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「芸術家気取り」のネロは民衆には人気があった
ユリウス・クラウディウス朝~ローマ史講座Ⅵ(4)ネロ(上)
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
暴君の代名詞とされるネロ皇帝。しかし、その初期治世は「善政」に始まったと早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏は言う。16歳で即位した彼の側近には哲学者セネカが控え、生来の派手好きな面は民衆に愛されたという。(全6話中第4話)
時間:7分02秒
収録日:2017年8月7日
追加日:2017年9月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●血なまぐさい陰謀の末に皇位に就いたネロ


 クラウディウスが亡くなった後、ゲルマニクスの娘であるアグリッピナの息子、ネロが皇帝の位に就きます。ティベリウスの後のカリグラはゲルマニクスの実子、クラウディウスはゲルマニクスの実弟、そしてネロはゲルマニクスの孫ということで、3人の皇帝は、ゲルマニクスと非常に濃いつながりの中から出てきました。

 クラウディウスには、アグリッピナの前妻であるメッサリナとの間にブリタニクスという次期皇帝候補の息子がいたわけですが、(クラウディウスの死後まもなく)亡くなります。この時にネロが手を下したかどうかは分かりませんが、おそらくアグリッピナの差し金であろうといわれています。

 また、クラウディウスの死そのものも、やはりアグリッピナの差し金ではないかということが、かなり確率の高い可能性として取り上げられています。叔父であったクラウディウスを、アグリッピナはそれほど慕ってはいませんでした。そこで、なるべく早い機会に亡き者にしようと考え、紀元54年に殺してしまったようです。そして、自分の息子であるネロを次期皇帝に就けるのです。


●セネカの補佐を受け、善政のスタートを切る


 われわれは、ネロの名を暴君の代名詞のように使いますが、カリグラ同様、彼も皇帝になった当初は立派な皇帝になろうと努力していました。ネロが即位したのはカリグラより若い10代ですから、最初の4~5年の間は彼もしおらしく務めていました。あるいは、若すぎて、自分の明確な意思を持たなかったという面があったかもしれません。

 側近にはセネカなどの優れた哲学者がいたため、補佐を受けながら彼は善政を敷いていました。このセネカも、アグリッピナとの関係から重用された人物らしく、ネロの裏ではアグリッピナがいろいろな糸を操っていたと見られます。

 そのように、10代で皇帝になったネロの治世初期4~5年は善政でした。しかし、自分の意思のようなものが芽生えてくると、セネカのような人物にストア哲学の教えを諭されたりすることが邪魔になってきます。とはいえ、最初のうち彼は、皇帝として死刑執行のための許可を行うことにも抵抗があり、「皇帝になどならなければ良かった」としおらしく述べた形跡があります。


●目立ちたがりの芸術家気取りで、民衆の人気者になる


 ところが、ネロは成長するにつれて自分の意思を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ