古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「父祖の遺風」は古代ローマ人が常に大事にした行動基準
第2話へ進む
現代にも影響する快適な生活…古代ローマの水道はなお現役
古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ(1)実利精神が生んだソフトとハード
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
東京大学名誉教授・本村凌二氏が、古代ローマ帝国の強さの秘密と古代ローマ人の特性について徹底分析、われわれ現代人の生活のヒントを探る。第1話では、古代ローマ人の優れた実利精神にフォーカスする。古代ローマが生み、育て、現代にまで引き継がれた遺産はなんと数多いことか!(全5話中第1話)
時間:15分39秒
収録日:2016年10月20日
追加日:2017年1月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマは「自分の国を守る」という強烈な意識を持っていた


 前回のシリーズレクチャーで、数千は下らなかったといわれている地中海世界のポリス(都市国家)の中で、なぜ、ローマ人があれだけの大国を築くことができたのか、というお話をしました。その中で、ローマ人が非常に質実剛健であるということと、裏腹かもしれませんけれども、非常に敬虔であり、神々に対して畏れの念を抱いていたということが彼らの一つの誠実さに連なったというお話をしたわけです。

 また、もう一つ、ローマ人は自分たちの“祖国”を発見した人々ではないかということもお話ししました。この議論をすると、「いや、われわれの時代には祖国なんて皆、発見している」といった反論もいろいろとあるのですが、さかのぼっていけば確かに祖国とか母国、あるいはもっと平たくいえば特に故郷というものを誰が発見したか、などということは、もう確かめようがありません。誰でも自分が生まれ育ったところは懐かしいに決まっているからです。

 そういう意味での祖国や母国ではなく、「自分の国を守る」ということに対する気概をどれだけの人たちが持っているかということ、つまり国王やその周りの人、いわゆる支配者階級や指導者階級といったごく一部の人たちだけではなく、もっと下位の人たちもそうした意識を持つということから考えていきますと、やはりローマ人は非常に強烈にそうした意識を持っていた、といえるのではないかと思います。


●ローマの気概-アッピウス・クラウディウスの大演説


 例えば紀元前3世紀のことですが、ギリシャ人の勢力がまだイタリア半島の南部にあった頃、その勢力とローマ人が戦うことになった時にその戦いの中で捕らえられていたローマの将軍が、「ギリシャ人の勢力と戦った自分が和平交渉をしてくる」ということでローマに帰還してきます。ギリシャ側からすれば、それは一つの賭けになります。つまり人質として捕らえていた人物を戻すわけですから、自分の国に帰ったら裏切られてそのままになってしまうケースは十分考えられます。その将軍は自分だけでなく部下を2,000人ほど引き連れていったといわれていますが、その後ギリシャとローマは和平交渉に入ります。

 前回お話ししたと思いますが、アッピア街道をつくったアッピウス・クラウディウスという人物が、そうしたローマ人のいわば弱腰の姿勢に対して強く...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子