古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「父祖の遺風」と「武士道」-ローマと日本の伝統に学ぶ
古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ(3)ローマと日本に相通じる精神
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
東京大学名誉教授・本村凌二氏によるローマ帝国とローマ人の特性に関する連続講義。前回に引き続き、ローマをローマたらしめた「父祖の遺風」について考える。「父祖の遺風」の本質的な部分にフォーカスすると、見えてくるのは意外にも、日本の「武士道」との共通点だった。(全5話中第3話)
時間:10分52秒
収録日:2016年10月20日
追加日:2017年1月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●「父祖の遺風」と新渡戸稲造の『武士道』


 私は日本人に父祖の遺風を分かりやすく伝える場合には、やはり武士道の教えというものが大きくオーバーラップする気がします。「武士道」というと、なんとなく切腹などを考えがちですけれども、そうした荒っぽい、硬派な武士道ではなく、新渡戸稲造が『武士道』という本に書いたようなことです。この本はもともと非常に優れた英語で書かれており、今いくつかの出版社で翻訳されています。新渡戸稲造は1862年、つまり幕末の生まれで森鴎外と同じ年ですが、あの時代の人たちの英語力はすごいものがあるなと思います。


●日本人のふるまいの根拠は武士道にある


 彼が『武士道』を書いたのはなぜか。ヨーロッパには一神教的な宗教があります。それはキリスト教ですが、それよりも東の方に行くと中東あたりにはイスラム教があり、それからユダヤ教の伝統もあるわけです。そういった一神教的な神の存在があって、その中でモラル、道徳が育まれていくというのが欧米人の考え方でした。しかし、幕末から明治にかけて、(欧米から人が)たくさんやって来るのですが、どうも日本人はそれほど宗教に熱心であるわけではないし、その宗教もいわば仏教であったり儒教であったりといった、欧米の人たちから見れば多神教的な宗教であるわけです。そんな中、なぜ日本人はあれだけ礼儀正しく、きちんとした行動ができるのか。そのことに疑問を抱いたといいます。

 一方、新渡戸は欧米、特にアメリカに長く留学し、そこで仕事にも励みますが、周りの人たちからそのことを聞かれた時、最初彼は返事ができなかったそうです。確かに言われてみれば、日本人は礼儀正しくて、いろいろな面で誠実です。その根拠はどこにあるのかと、たどっていった時、彼がはたとして気が付いたのが「武士道」でした。

 すでに江戸時代ではなかったのですが、やはりそういうものがその頃の明治の人たちには何となく受け継がれていて、彼はそれをたどっていき、『武士道』という本を書くことになるのです。『武士道』の中では、祖先の遺風であるとか、他人に対する思いやりといったことを繰り返し教育として受けてきたということが書かれているのです。


●父祖の遺風と武士道の共通点-生活全般の心構え


 ローマの父祖の遺風を考えると、ちょうど武士道と重なるところがあります。武士道というと、かつてはヨー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎