古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ルクレティアの悲劇に象徴されるローマの共和政
古代ローマ人に学ぶ~ローマ史講座Ⅱ(4)ローマの自由と寛容を知る
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマとローマ人精神を語る上で「自由と寛容」は欠かせない、と古代ローマ史を専門とする東京大学名誉教授・本村凌二氏は言う。ローマ人たちは、征服した土地の神さえ自分たちの神として神殿に祀り、その土地の人々を自分たちの色に染めようとしなかった。その寛容さの根底に、自由への強い思いがある。(全5話中第4話)
時間:17分43秒
収録日:2016年10月20日
追加日:2017年2月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマの特質は「自由と寛容さ」にあり


 ローマ人が共和政国家として強国、そして大きな覇権を築いていく過程の話を続けます。彼らには非常に質実剛健な面があり、父祖の威風を守るなど、堅苦しい感じを受けなくもないのは確かです。しかし一方で、ローマ人は非常に「自由を重んじる」ことを大切にしました。このことは、後にローマ帝国を確立し、長期間にわたって広大な地域を支配できたことにも相通じるかもしれません。

 自由というと、得てして自分の自由を重んじて、他に対しては寛容でないといったことになりがちですが、やはり自らの自由を重んじる以上は、他者に対してもある種の寛容が求められます。ローマ人は、そのような「自由と寛容さ」の特徴を極めて強く持っていた民族ではなかったかと思います。

 ローマでそうした「自由」が最初に出てくるのは、共和政が始まる紀元前509年のことです。初代王ロムルスに始まって7代にわたる王政期が続きましたが、その末期ローマは繰り返しエトルリア勢力の侵攻がありました。当時の先進地域だったエトルリア出身の人々は事あるごとにローマに入り込み、中枢でのし上がる人物も出てきました。つまり、ローマは他民族に支配されるという苦い経験をしたのですが、中にはいい王ばかりでなく、特に最後の王の一族は大変暴虐でした。そのため、ローマ人は立ち上がり、彼らを追放したのです。以下は、それを象徴するルクレティアの話です。


●「高潔なるルクレティアの悲劇」とは


 ルクレティアの夫は、エトルリア人の王の息子が率いる軍隊に所属していました。ある時、戦地で妻の自慢比べが始まり、男たちは口々にいかに自分の妻が素晴らしいかを競いました。素晴らしいとは外見の麗しさだけでなく、尽くしてくれる美徳や品行方正な貞淑さにも及びます。ひとしきりそんな話が続いた後、「では、急いで帰って、妻たちがどんな振る舞いをしているか見てみよう」ということになりました。

 戻ってみると、ほとんどの妻が勝手気ままに羽目を外している中、ルクレティア一人が夫の帰りを待ち望んで家事万端を整え、質素でしとやかな生活を送っていました。

 これを見て、エトルリア人の王の息子が、ルクレティアの夫に対して非常な嫉妬心を燃やします。彼は夫の留守を見計らってルクレティアの元を訪れて強引に泊まり込み、夜間になると寝室に忍び込み、強引に襲いま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治