●どこにローマの優れたところがあったのか
今日は手始めに、ローマ人とはどのような人たちだったのかということについてお話しします。まずは、ローマ人が、彼ら自身のことをどう考えていたのかということから手掛かりを見いだしていきたいと思います。
ローマ人は、広大な地域を長い期間にわたって征服し、しかも安定した国家を何百年も続けた民族です。現代の国家と比較すると、例えばソビエト連邦は、ロシア革命から崩壊するまで、わずか70年ほどしかありませんでした。ところがローマ帝国は、短く見積もっても400~500年はいわゆる「パクス・ロマーナ」の時代が続きました。長く見れば1000年以上、それなりの力を持っていたのです。
では、どこにローマの優れたところがあったのか。実はローマ人自身が、自分たちでいぶかっていました。われわれはなぜ地中海の覇権を握ることができ、なぜこれほどの大帝国を築けたのかと疑問に思っていたのです。
例えば、ローマ人にとっての先進文化を築いた民族に、エトルリア人がいました。現在のイタリアでいえば、フィレンツェからローマまで広がるトスカーナ地方という、イタリアで一番良いところに住んでいた人たちです。最初に来たから、一番良いところに住んでいたのです。現在、そこがトスカーナ地方と呼ばれているのは、ローマ人がエトルリア人のことを「トゥスキー」と呼んでいたからです。
このエトルリア人は、技術に優れていました。よくローマ人は土木建築技術に長けていたといわれますが、実はその知識の多くはエトルリア人から学んだものです。例えば、ある歯がなくなったとき、その両側の歯に入れ歯をかけて治療する「ブリッジ治療」の技術がありますが、エトルリア人はその技術を今から2500年くらい前にすでに開発していました。手先が器用だったこともあるでしょうが、そうした技術を持っていたということです。そうした点において、エトルリア人にはかなわないとローマ人は言っているのです。
●学問、芸術、思想ではギリシャにまったくかなわない
それから、ドイツのゲルマン人、北欧のケルト民族、フランスのガリア人、イギリスのアングロサクソンなどは、今でもヨーロッパに行けば分かると思いますが、体格が良いわけです。ローマ人はラテン系で、どちらかというと日本人のように背がそれほど高くありませんでした。つまり体格面では、ゲ...