独裁の世界史~ローマ編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ローマが見識を磨いていくために重視した「父祖の威風」
独裁の世界史~ローマ編(2)見識を育んだ「父祖の威風」
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマの政治や歴史を知る上で、元老院の存在は大きい。300人の元老院がそれぞれの見識を持つことで、ローマの政治は成り立っていった面がある。その見識を育むのは、家族の歴史を知り、自分も負けないようになる「父祖の威風」の重視だった。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分15秒
収録日:2019年12月19日
追加日:2020年5月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマ史400年で初めて起こった内部闘争


 前回いくつかお話があったなかに、ローマは内部の権力闘争が少ないということがありました。これはやはり先生からご指摘があったような、民会と元老院とコンスルという三すくみのチェック機能と言いましょうか。今流にいうと、三権分立の原初的な形にもなりそうですが、それがうまくできているから少なかったのですか。権力闘争が少ない理由というのは、もともとどこに求めればよろしいですか。

本村 少ないといっても、基本には当然ながら貴族を中心とした党派の争いというものがあります。ところが、ギリシアの場合は党派の違いが非常にはっきりしていたのに比べ、ローマの場合は、国内の同じローマ市民同士で争いごとをするのが非常に恥ずかしいことだという意識がありました。戦うのはあくまでも敵であって、ローマ市民同士の戦いは、議論があれば応じるけれども、武器を交えて戦うことはすべきでないという意識が、ローマ人にはどうもあったのです。

 紀元前2世紀にグラックス兄弟の改革という事件があり、兄のほうのティベリウス・グラックスが先に殺されてしまいます。ローマ市民同士が争い、流血の事態が起こったということで、ローマ人にとっては非常に大きな事件でした。それまでローマ人は、400年近くそういう事態を避けてきたのです。

 ギリシアの場合は、もう少し頻繁に内部で武器を用いています。例えば、僭主がのし上がってくる時もそうですし、その後にスタシス(内部闘争)が起こった時もそうです。そのように市民同士で、単なる議論だけではなく争いが起こるという面もあったのではないでしょうか。

 さらに、ローマにはある種の祖国意識みたいなものが非常に強かったという意見もあります。


●貴族と民衆の身分差が権力闘争の少なかった要因?


 これはもう制度論というよりも、先生のお見立てですと、第一にはやはり精神論というか、ローマの人々が持っていた精神性なり倫理観に起因するということなのでしょうか。

本村 精神性に起因するのもあるし、貴族と庶民(民衆)の離れ具合もあります。つまり、貴族たちがリーダーなのですが、それに民衆がくっついていく形で、そういうシステムを取っていたため、ローマの場合はやはり貴族をそれなりに敬うということがあったのではないか。ギリシアの場合は、それがもう少しローマよりも希薄で、内...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建