独裁の世界史~ローマ編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
独裁政・貴族政・民主政のバランスが取れていた古代ローマ
独裁の世界史~ローマ編(1)なぜローマは帝国になったか
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
長い世界史のなかで共和政期における古代ローマと中世におけるヴェネツィアは、独裁政の抑制に働いた二つの国家として注目に値する。今回のシリーズではローマの成り立ちと、政治の仕組みを見ていく。第1話では、なぜローマは帝国になったか、その理由について解説する。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分45秒
収録日:2019年12月19日
追加日:2020年5月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●独裁政の抑制に働いた二つの国家、ローマとヴェネツィア


―― 「独裁の世界史」シリーズのなかで、前回はギリシアのお話をいただきました。今回はいよいよ先生にローマのお話をいただければと思っております。

 ローマ史にはいろいろな切り口があると思いますが、こと「独裁の世界史」という切り口で見る場合に特徴的なのは、ギリシア編でも少しお話しいただいたように、共和政というものが500年にわたって長く続いたというところかと思います。ここで改めて、なぜ共和政がローマにおいて始まり、それだけ長く続いたのかというところを教えていただいてもよろしいでしょうか。

本村 非常に大ざっぱにいうと、前近代の歴史ではほとんどの国家が独裁政になりやすかったと思います。ローマも後半においてはそうですし、フランス革命以前の世界の歴史自体がそういうものだったのです。そのなかで、際立って「独裁政を抑制しよう」「排除しよう」という形で動いたのがローマ人の国家、特に前半の共和政期と呼ばれる時期です。その後の中世や近世においては、地中海におけるヴェネツィアが、そうでした。

 これら二つの体制は、できる限り独裁政に傾かないようにするにはどうしたらいいかということを、実例を通してわれわれに教えてくれる存在です。独裁を避けるという意志を持ってやってきた意味は非常に大きいし、そこから逆に独裁の持つ意味というものも取り出してこられるのではないかと思います。


●エトルリア人からの自由を求めた「SPQR」


本村 ローマ人の場合、最初の250年ぐらいの時期は、いわゆる王政という形で独裁政が続きました。そのなかでも、王政の後半期になると、先進地域の住民であったエトルリア人がローマの政権のなかにも入ってきました。そのため後半の3代の王はエトルリア系の国王になっていました。

 王政の最後のほうでは、エトルリア系の国王一族が、ローマの国民に対する抑圧や酷使のようなことを行うようになります。ローマ人は、そこからできるだけ解放されようとして頑張りますが、最終的には国王一族の者が行ったスキャンダラスな事件を手掛かりに、王政を打倒することができました。これが紀元前509年の、いわゆるローマ共和政の樹立といわれる時期です。

 ローマの共和政はこのようにしてつくられますが、その国家は「S.P.Q.R.(Senatus Populusque Romanus:ローマの元老院と...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏