独裁の世界史~ローマ編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
500年続いたローマ共和制はいかに帝政に変わったのか
独裁の世界史~ローマ編(4)共和政の変質と終焉
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマが版図を拡大し帝国化するに従って、共和政は次第に衰退を迎えることになる。カエサルやアウグストゥスの頃には幅を利かせた元老院の権威も、軍人皇帝の時代になると顧みられない。悪帝や五賢帝の時代は、その過渡期といえるだろう。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分38秒
収録日:2019年12月19日
追加日:2020年5月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●カエサルやアウグストゥスも守った「共和政」


―― 前回は、元老院の仕組みと、それが共和政を支えていたことをうかがいました。「独裁の世界史」という観点でいうと、これがだんだん変わっていって、まさに帝政に移行していくことになる過程をうかがいたいところです。総論的にお話しいただくと、どういう過程になりますか。

本村 非常に単純にいえば、中世のヴェネツィアの場合も同じですが、共和政にも民主政と似たようなところがあり、ある程度数的な規模が小さくないと、うまく機能しなくなる。大きくなっていくときに、変質せざるを得ない局面を迎えるわけです。

 ローマの場合は、ちょうどその時にカエサルが出てきました。カエサルでさえ、共和政を壊すなどとは言わないわけです。実質的には「三人委員」といいますか、クラッスス、ポンペイウスと自分とで権力を独占するようなところがあるわけだけれども、建前上はあくまでも共和政を守るのです。

 アウグストゥスも同様で、「自分はいわゆる独裁者や王のような特別な地位にあるのではなくて、唯一自分が特別な地位にあるとすれば、権威において優れているだけなのだ」と彼は言って、建前は共和政を守っていくわけです。

 しかし、彼らの守った共和政が、どこまでかつての元老院貴族が中心になって引っ張っていった共和政と近かったかは疑問です。帝政期になってくると、元老院で議論をしても、結論は最初から皇帝のほうから最初に指示されているようなことが起こってくるようになります。


●暴君も賢帝も元老院次第だった元首政初期


本村 このように、いわゆるローマの帝政(元首政)では事実上は独裁政であっても、形においては共和政を守るのです。だから紀元1世紀に出てくるローマの悪帝たち、カリギュラやネロ、ドミティアヌスなどのいわゆる「暴君」らは元老院から嫌われます。彼らは元老院を軽視するところが決定的にまずくて、つまり共和政の伝統を守っていないことになったからです。

 ただし彼らは庶民には必ずしも悪評ではなく、典型的なのはネロですけれども、意外に庶民には人気があったといわれています。それでも彼は元老院貴族を軽視したり、その意向を大事にしないようなことがあり、最終的には元老院貴族から見向きもされなくなって、自害せざるを得なくなります。

 だから、多くの地域がどんどん国家の中に入ってきてロー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治