五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カラカラ帝のアントニヌス勅法はローマ帝国の普遍化の象徴
五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ(3)カラカラ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
東京大学名誉教授の本村凌二氏が五賢帝時代終焉後から軍人皇帝時代になるまでの皇帝たちを語る古代ローマ史シリーズ。第3話は「アントニヌス勅法」と「カラカラ浴場」で名を残すカラカラを取り上げる。(全4話中第3話)
時間:8分32秒
収録日:2018年7月2日
追加日:2018年9月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●全属州の自由民を認めた「アントニヌス勅法」


 ローマ帝国の普遍化を象徴するのは、セプティミウス・セウェルスの息子であるカラカラ帝が212年に出した、“Constitutio Antoniniana”です。「アントニヌス勅法」と訳されますが、「ローマ帝国の中にいる全自由民はローマ市民である」ということをうたったものです。

 それまでは、ローマ市民とローマ市民ではない「外人」とが区別されていたわけです。しかしローマは、前にも話したように、ローマ市民権の付与に非常に積極的でした。ですから、市民はもちろん徐々に増えていたわけですが、212年の“Constitutio Antoniniana”によって、もはや「全自由民にローマ市民権を与える」ということになりました。いわばローマ帝国は、ある意味ではその時に完成したといっていいのです。

 ローマやイタリアと区別された属州という形ではなく、全体が一つの国家の中に編入されているのです。もちろん単位としての属州は残っていきますが、ローマやイタリアに縛られない、広い意味でのローマ帝国が、そこで出来上がることになるのです。


●「軍の時代」に気付いていたセプティミウス・セウェルス


 セプティミウス・セウェルスは、もう一つ、大事なことに気付いていました。コンモドゥスが皇帝になった頃から、いやそれ以前から、ローマ帝国の根本にはローマの軍事力があること、すなわち「軍事力あっての国家」であるということです。

 ただ、五賢帝の時代は、それぞれが優れた皇帝で、しかも徳を備えた人だったので、そこのところがあまり目立ちませんでした。ところが、コンモドゥスのような、権威はないのに偉ぶっているような皇帝が出てくることになりました。彼がローマ皇帝になった背後には、やはりローマ市民が自由民によって占められていることがありました。

 つまり、ローマ市民を支配する大きな権力として、五賢帝の時代には「美徳」がありましたが、その背後にはさらに強い軍事力があり、そのことが、コンモドゥスのようなあまり権威のない皇帝が出てきたことによって、非常にはっきりしたわけです。

 セプティミウス・セウェルスは、コンモドゥスなどと比べると無論相当に優れた面を持っていましたが、「ローマにとって軍事力が一番の基本」であることは、むき出しに見えてきていたということです。


●カラカラとゲタの権力争い


 セプティミウス・...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
デモクラシーの基盤とは何か(3)政治と経済を架橋するもの
「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ
齋藤純一
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏