五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ローマ皇帝の列伝中で「桁違いの悪帝」エラガバルスの背徳
五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ(4)負の凝縮
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
東京大学名誉教授の本村凌二氏が五賢帝時代終焉後から軍人皇帝時代になるまでの皇帝たちを語る古代ローマ史シリーズ。第4話は、ローマ史の負を凝縮したともいわれる、歴史学者たちの眉を一様にひそめさせたエラガバルスの奇行から、アレクサンデル・セウェルスの運命を取り上げる。(全4話中第4話)
時間:10分56秒
収録日:2018年7月2日
追加日:2018年9月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●シリアからやって来た、とんでもない少年皇帝


 カラカラの亡くなった後しばらくたって皇帝に指名されたのは、シリアに住む少年でした。それは、エラガバルスという名で君臨した皇帝です。第1話でセプティミウス・セウェルスはセム語系だといいましたが、本をただすとカルタゴからフェニキア、つまり現在でいえばシリア、レバノン、パレスチナといった地域の出身で、そこに彼の親族もいたからです。

 さてエラガバルスですが、とんでもない皇帝でした。問題は主に素行の面で、振る舞いはホモセクシュアルを超え、男性でありながら「女性でありたい」と公言するような人物だったのです。

 伝記作家の中には、「ローマ皇帝の列伝中にはカリグラやネロのような悪帝が登場するが、このエラガバルスは桁違いであり、皇帝の威厳などかけらも感じられない」と言った人がいるぐらいです。彼は自分の女装趣味を全く隠すことなく、時と場合によっては女装して売春をしていたという噂も出るほどの皇帝だったのです。

 「男であるより女になりたい」と平気で公言するような皇帝は、当時の歴史学者から見てとんでもない存在でした。皇帝の権威という次元で考えると、カリグラやネロの悪行も影を潜め、エラガバルスの背徳が群を抜いているわけです。


●人類の負を凝縮したエラガバルスからアレクサンデルへ


 「ローマ史の中には、人類の経験の全てが凝縮されている」と私は申し上げてきました。それはプラスの意味も多いのですが、マイナスの意味でも同様であることが、この皇帝の存在からお分かりいただけると思います。

 丸山眞男という偉大な学者も「ローマ史の中には、どんなことも凝縮されている」と言いました。その、まさに負の方、ネガティブなファクターを凝縮したのが、エラガバルスです。そのような素行・奇行に対して、周囲の人々は「ここまで皇帝の権威が地に落ちたか」と苦々しく見ていましたから、やがて彼も暗殺されてしまうことになります。

 彼の後に帝位に就いたのは、アレクサンデル・セウェルスです。やはりセプティミウス・セウェルスの遠縁でした。時代が良ければ、それなりの業績を挙げたかもしれない人物ですが、若すぎたことや気弱な面があって、大したこともできないうちに、やはり暗殺されます。

 世の中は、この後の「軍人皇帝時代」に向かっていました。セプティミウス・セウェルスは...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(6)賴住光子先生ラフカディオ・ハーン論
ラフカディオ・ハーン『怪談』と『神国日本』の深い秘密
テンミニッツ・アカデミー編集部
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
印象派の解体と最後の印象派展(5)ポスト印象派の台頭
ゴーガン、ルドン、スーラ、ゴッホ…ポスト印象派の時代へ
安井裕雄
新撰組と幕末日本の「真実」(3)「日野と多摩」の風土と天然理心流
田舎のヤンキー像は大違い…日野の豊かさと文武両道の気風
堀口茉純
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
大谷翔平の育て方・育ち方(7)不可能を可能にする力
「てっぺん」を目指したい――不可能を可能にする秘密とは
桑原晃弥
こどもと学ぶ戦争と平和(6)平和な社会を守るために
チャーチルの名著『第二次世界大戦』に学ぶ真の平和への道
小原雅博
インフレの行方…歴史から将来を予測する(2)明治以降の物価推移とインフレ率
戦後日本のハイパーインフレの真実…その時、何が起きたのか
養田功一郎
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄