五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
哲人皇帝と呼ばれた父親に反発したコンモドゥス
五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ(1)コンモドゥス
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「人類史の中で最も至福の時代」と呼ばれた五賢帝時代が終わり、ローマ史は新しいフェーズへ突入していく。五賢帝最後のマルクス・アウレリウスが没した180年から軍人皇帝の時代と呼ばれる235年まで、55年間のローマに現れた皇帝について、東京大学名誉教授の本村凌二氏が語る。最初は6番目の賢帝になり損ねたコンモドゥスである。(全4話中第1話)
時間:12分33秒
収録日:2018年7月2日
追加日:2018年8月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●マルクス・アウレリウスから実子コンモドゥスへ


 前回のシリーズでは「五賢帝」についてお話ししましたので、今回はその後について話をします。

 五賢帝の最後は、「哲人皇帝」として名高いマルクス・アウレリウスです。非常に立派な皇帝で、後世から見た最大の失敗は、実子であるコンモドゥスを皇帝に指名したことだといわれています。実際、父であるマルクス・アウレリウスが亡くなった後、コンモドゥスがとんでもない皇帝であることが分かってきたために、そういわれているのです。

 五賢帝の多くは、後継者を実子よりも養子に頼り、最も適任者を指名するという形を取り続け、それが功を奏していました。それに比べ、コンモドゥスは実子です。ただ、それまでの五賢帝が、実子を後継者に指名することを避けたというのは当たりません。子どもがいないか、いても幼い間に亡くなることが多かったため、実子を指名したくてもできなかったのです。そこで、実質的な方法として、周囲にいる者の中から最適な人を選ぶしかありませんでした。

 マルクス・アウレリウス帝の場合は、実子コンモドゥスがいました。父親の在世中、わがままを出さず、真面目に振る舞っていた息子コンモドゥスですが、父親が亡くなり皇帝の位に就くや、思い通りのやり方を通すようになります。ストア派哲学者で「哲人皇帝」と呼ばれた父親への反発もあったのでしょう。


●プラトンの理想「哲人王」を追った父と反発した息子


 ストア派の哲学にのっとってローマの政治を行うのは、600年以前のプラトンに源流があります。ギリシャのプラトンが理想にしたのが哲人王(皇帝)だったからです。

 古代ギリシャのポリス、特にアテネは民主政という類いまれな政治形態を編み出し、実現していました。しかし、現代風にいうとポピュリズムが横行し、民衆が自分勝手な欲求や欲望に走ります。その結果として、紀元前5世紀から4世紀の初めごろ、ギリシャの多くのポリスは民主政そのものがあまり機能しなくなる事態を経験しました。

 その実態を見たプラトンや弟子のアリストテレスなど古代の錚々たる哲学者は、もう民主政には期待しませんでした。それよりも、衆に優れて見識のある人、私欲がなく物事を公正に考えられる人が為政者になる方がいい。それが、哲人王(皇帝)の理想でした。その延長としてアリストテレスは、少数の優れた人々の集団とし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治