五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ
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アフリカ出身のセプティミウス・セウェルがローマ皇帝に
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哲人皇帝と呼ばれた父親に反発したコンモドゥス
五賢帝時代が去って~ローマ史講座Ⅸ(1)コンモドゥス
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「人類史の中で最も至福の時代」と呼ばれた五賢帝時代が終わり、ローマ史は新しいフェーズへ突入していく。五賢帝最後のマルクス・アウレリウスが没した180年から軍人皇帝の時代と呼ばれる235年まで、55年間のローマに現れた皇帝について、東京大学名誉教授の本村凌二氏が語る。最初は6番目の賢帝になり損ねたコンモドゥスである。(全4話中第1話)
時間:12分33秒
収録日:2018年7月2日
追加日:2018年8月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●マルクス・アウレリウスから実子コンモドゥスへ


 前回のシリーズでは「五賢帝」についてお話ししましたので、今回はその後について話をします。

 五賢帝の最後は、「哲人皇帝」として名高いマルクス・アウレリウスです。非常に立派な皇帝で、後世から見た最大の失敗は、実子であるコンモドゥスを皇帝に指名したことだといわれています。実際、父であるマルクス・アウレリウスが亡くなった後、コンモドゥスがとんでもない皇帝であることが分かってきたために、そういわれているのです。

 五賢帝の多くは、後継者を実子よりも養子に頼り、最も適任者を指名するという形を取り続け、それが功を奏していました。それに比べ、コンモドゥスは実子です。ただ、それまでの五賢帝が、実子を後継者に指名することを避けたというのは当たりません。子どもがいないか、いても幼い間に亡くなることが多かったため、実子を指名したくてもできなかったのです。そこで、実質的な方法として、周囲にいる者の中から最適な人を選ぶしかありませんでした。

 マルクス・アウレリウス帝の場合は、実子コンモドゥスがいました。父親の在世中、わがままを出さず、真面目に振る舞っていた息子コンモドゥスですが、父親が亡くなり皇帝の位に就くや、思い通りのやり方を通すようになります。ストア派哲学者で「哲人皇帝」と呼ばれた父親への反発もあったのでしょう。


●プラトンの理想「哲人王」を追った父と反発した息子


 ストア派の哲学にのっとってローマの政治を行うのは、600年以前のプラトンに源流があります。ギリシャのプラトンが理想にしたのが哲人王(皇帝)だったからです。

 古代ギリシャのポリス、特にアテネは民主政という類いまれな政治形態を編み出し、実現していました。しかし、現代風にいうとポピュリズムが横行し、民衆が自分勝手な欲求や欲望に走ります。その結果として、紀元前5世紀から4世紀の初めごろ、ギリシャの多くのポリスは民主政そのものがあまり機能しなくなる事態を経験しました。

 その実態を見たプラトンや弟子のアリストテレスなど古代の錚々たる哲学者は、もう民主政には期待しませんでした。それよりも、衆に優れて見識のある人、私欲がなく物事を公正に考えられる人が為政者になる方がいい。それが、哲人王(皇帝)の理想でした。その延長としてアリストテレスは、少数の優れた人々の集団とし...

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