五賢帝時代~ローマ史講座Ⅷ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
自分の功績を記録しなかったハドリアヌス
五賢帝時代~ローマ史講座Ⅷ(6)パンテオンとハドリアヌス辞世の句
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ハドリアヌスの文化事業の中でも特筆すべきは、ローマのパンテオンと、辞世の句である。前者は、自らの功績を誇示しなかったため近年までハドリアヌスのものと見なされなかったものであり、後者はラテン詩の傑作である。建築と詩作に努めた文人皇帝の最後を、東京大学名誉教授の本村凌二氏が語る。(全9話中第6話)
時間:7分19秒
収録日:2018年2月8日
追加日:2018年5月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●ハドリアヌス建築の代表――ローマのパンテオン


 ハドリアヌス・ルネッサンスということで、多くの建物を造った中でも、代表的なものがローマにあるパンテオンです。

 パンテオンは万神殿、つまり神々の全てを祭るところという意味です。円形のドームで、建物を見た時「こんなものを2000年近く前によく造ったものだ」と思いました。まだ日本には卑弥呼もいないような時代です。そういう時代に造ったものが、今でも顕然と残っており、ローマの観光の一つのメッカになっているわけですが、これもハドリアヌスが建てさせたものです。


●自分の功績を記録しなかったハドリアヌス


 ただ、パンテオンそのものはアウグストゥスの時代にありました。そもそも最初はアウグストゥスの側近だったアグリッパがこのパンテオンを造ったのです。それが何度か火災や落雷に遭って壊れたため、また造り直すということで、現在残っているパンテオンはハドリアヌス時代のものです。

 ハドリアヌスの奥ゆかしいところは、そのパンテオンのちょうど一番正面にアグリッパが3回目のコンソルの時に造ったという碑文が掲げてありますが、そこには一言も彼が造ったことに触れていない点です。

 ハドリアヌスの時代にパンテオンができたことは、同時代の人たちは知っていました。けれども記録には何も残していないので、たとえ同時代の人たちがそれを造ったのはハドリアヌスだと記憶していたにしても、その記憶が消えていき、近代になってそのパンテオンが教会などに変えられ利用されていく中、碑文に残されていたままアグリッパが3回目のコンスル(執政官)の時に造られたものと思われていました。

 そのため、19世紀や20世紀になっても、学者たちは、これはアグリッパが造ったものであると本当に思っていたのですが、ここ何十年かの間に考古学の研究が進んできて、このパンテオンはハドリアヌス時代に造られたことが明らかになってきました。パンテオンの一部を剥がすとレンガなどがたくさん出てきたのですが、レンガにはそれを造った人の名前が刻んであり、それらを見るとハドリアヌス時代の有名な職人の名前があったというのです。ということで、今ではハドリアヌスが造ったものだといわれています。

 その他、有名なものとしては、ブリタニアの「Hadrian’s Wall」というハドリアヌスの長城もあります。そのように、次々に立派な建...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治