軍人皇帝時代のローマ史~ローマ史講座Ⅹ
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帝国立て直しに尽力したデキウスが悪帝である理由
軍人皇帝時代のローマ史~ローマ史講座Ⅹ(2)ローマ建国千年紀の軍人皇帝
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
動乱の238年、5人の皇帝の即位と死を経験したローマ帝国は、未曾有の混乱期に差し掛かっていく。ちょうどローマ建国1000年を迎える248年には、どんな皇帝がいたのだろうか。(全6話中第2話)
時間:9分02秒
収録日:2018年8月29日
追加日:2019年1月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●ゴルディアヌス3世からピリップス・アラブスへ


 1年間に5人の皇帝が亡くなった後、13歳のゴルディアヌス3世が即位します。3世といっても2世の子ではなく、ゴルディアヌス1世の娘の子でした。すごく若かったため、皇帝の務まるはずもなく、おじあたりを代理人としてローマの統治を行うことになりましたが、建前上はあくまでもゴルディアヌス3世の治世です。

 ところが、この皇帝がだんだん成長してくる過程で、どうもあやしくなってきた。13歳で即位して5~6年たち、18歳ぐらいになり、それなりに成長しても、どうも皇帝の務まるような器量がなさそうなのです。彼はだんだん周りからの人望や信頼をなくし、皇帝の器ではないということで、若くして殺されてしまいます。

 彼の後はピリップス・アラブスです。アラブスという名前から分かるようにアラビア人の血を引き、シリアの西南部で生まれたといわれます。つまり、バルカン半島よりさらに東方のアラブ系の人間までがローマ皇帝になってしまった、ということです。

 かつてのセプティミウス・セウェルスも、どちらかというとセム系の血を引いていましたが、ピリップス・アラブスに至って、ついにアラビア人そのものが皇帝になっているわけです。


●ローマ建国千年祭を祝ったアラビア人皇帝


 彼は息子を共治帝に立てて、約5年間、ローマ皇帝として君臨します。しかし、アラビア人がローマ帝国の皇帝になることに対して、東方の人は別にして、やはりローマ人からは非常に反感を持たれました。また、彼が皇帝の地位についていた248年は、よく考えるとローマの国家が誕生してちょうど1000年にあたっていたのです。

 紀元前753年がローマの建国ですから、248年がちょうど1000年に当たります。当然ながら、建国千年祭のようなものが華々しく行われました。その時の皇帝がピリップス・アラブスだったので、そういう意味で有名な皇帝です。しかし、その皇帝がローマやイタリアの貴族の血を引く者ではなく、ローマ帝国からはるかに遠いアラビア人の血を引いていたのは皮肉なことでした。

 こうしたことへの反感は抱かれていましたが、彼は殺されたわけではなく、戦死してしまいます。軍人皇帝の時代、軍事的な功績をあげることで皇帝としての成果と見なされたのです。結局、彼が戦死してしまったため、息子ももちろん一緒に廃位させられることになりました。

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