●2ページ見開きごとに人類史を学べる『ビジュアルマップ大図鑑 世界史』
―― 本村先生にはこの間、「独裁の世界史」というタイトルのもと、古代ギリシアから現代まで(配信は後日)を一気通貫する形でお話しいただいてまいりました。最近、それをまさにビジュアルで一気通貫して見るようなご本が出たということをお聞きしましたが、これがその本でございますか。
本村 ええ。これは『ビジュアルマップ大図鑑 世界史』という本で、私が日本語版の監修を務めました。スミソニアン協会という権威ある、知的な仕事をしている機関が原著を監修しています。
全体に非常に充実した記述で、例えばここからが先史時代の章ですが、アルタミラの壁画のような図版をまじえて「人類の誕生」を探っていきます。それから、ペルシア帝国についての記述があったり、漢帝国やローマの樹立、「ローマ帝国の絶頂期」という項目があったりします。印刷術が発明された時代についても、このように図版と地図で経緯が確かめられます。
ここは、オスマン帝国の統治についてです。先ほどローマ帝国の記述もお見せしましたが、両国の絶頂期を比べて見られるようになっています。ローマ帝国とオスマン帝国を比べてみると、地中海を挟みながら、西ヨーロッパの部分だけがオスマン帝国にはないことが明らかです。このように、興味に沿って2箇所を開けば、どこでどのように人類の営みが行われたかがすぐに比較できます。2ページ見開きによって、全ての人類史や世界史の項目を見ることができるからです。
近代に入ってくると、工業化の問題が起こったり、第一次世界大戦に至る中でいろいろなところに戦争が起こってきたりします。それから、経済的な破綻として恐慌もあります。
こちらは太平洋戦争における日本の状況で、真珠湾攻撃からミッドウェーの海戦にかけて、日本がどのようにしてだんだんと劣勢になっていくか、一つの地図で鮮明に分かったりします。
●「日本語版の監修を担当できたのは幸運だった」
本村 そのようにして、現代に至るまでの物語が約350ページにわたり、2ページずつで解説されています。大変ぜいたくでカラフル、しかも図案がたくさん入っている本です。
定価は6,500円(+消費税)で高いようですが、一度飲みに行くとそのぐらいは消えることを思うと、決して高くはありません。こちらは本当に一生もので、おそらく生涯役に立つような世界史の知識を得るのが、これ一冊で済んでしまうのですから。
私は日本語版を監修しましたが、この仕事が自分のところにまわってきて、担当できたのは幸運だったと思うほどです。決して自分が関与したから言うわけではありません。手元に置いておけば、自分の知識もそうですが、お子さんやお孫さんなど、これから人類史としての世界史を学ぶ方々にとっても、非常に基本的な知識が身につくのではないかと思います。ぜひ皆さんにお薦めしたいと思います。
―― これは先ほども少し拝見しましたけれども、2ページでずっと進んでいるというのがいいですね。
本村 ええ。そうです。アトランダムにあるのではなくて、とにかく2ページでいろいろな項目が扱われ、図版とテキストの両方を見ながら理解できるというのが素晴らしいと思います。
―― もしかすると世代によって差があるかもしれませんけれども、私どもの世代ですと、高校や中学の歴史の授業では地図や年表などの図版集を参照しました。
本村 ありましたね。
―― あれは限られたスペースでしたが、それを非常にぜいたくにしたものと思えばいいですね。あれも面白い経験でしたが、これを見ると図も非常に大きく入っています。
本村 ええ。序文の中で、監修者がこういうことを言っています。「世界の歴史を語る本のなかで、これほど微に入り細を穿つ解説と、目を見張るビジュアルをあわせ持つものは、いまだかつて見たことがない」と。自分で出しておきながら、監修者がやはりそう言っている。
実際、私も日本語版の監修を行う中で全体を見渡しましたので、それがまったくうそではないと言えます。自分が日本語版を監修できたことを幸運だと思うぐらいの本が、1回飲みに行く程度のお金で手に入り、一生モノの基本的な教養が身につく。非常にいい本ではないかと思い、ぜひお薦めする次第です。
(DK社/編著 スミソニアン協会
/監修 本村凌二/日本語版監修、東京書籍)