●2つの著書のポイントと特徴
―― ご著書である『教養としての「ローマ史」の読み方』と、『教養としての「世界史」の読み方』について、それぞれのポイントや特徴を教えてください。
本村 自分で言うのもおかしいのですが、私は非常に、教養というものに恵まれた人間でした。それはなぜかといえば、就職した大学が関係しています。最初に就職したのが法政大学の第一教養部です。その後、東京大学教養学部に勤めました。そして東大を辞めた後は、早稲田大学国際教養学部に行きました。こうやって見ると、教養3つに恵まれていました。だから、教養に恵まれたというのは、しゃれで言っているわけです。
ですがそういう中で、教養学部の類いにいるとやはり、幅広い学生を教えなければいけません。いわゆる史学科という小さなところから授業の要請があれば、それなりの授業をやります。しかし、メインの授業はだいたい、1年生や2年生を相手に、幅広く教えました。それが、大学における私の教育の、一番基本にあったように思います。
ですから、専門であるローマ史を中心に話しますが、そこは世界史の中のローマ史という形で話すわけです。そういう観点からいえば、『教養としての「世界史」の読み方』という本が、私が教養学部でお話ししてきたことの一番の真髄ないしエッセンスです。私が35年間ほど大学の教養学部で教えてきたものは、ほとんどその中にあります。
もう1つの『教養としての「ローマ史」の読み方』という本は、ローマ史に関する最近の学説であるとか、ローマ史に対する新しい見方なども盛り込んでいます。例えば先ほど、軍人皇帝時代のお話をしました。その軍人皇帝にどこの出身地の人が多いかと問えば、ローマの皇帝なので当然イタリア人が1番多いだろうと皆さん、思うわけです。しかし実は、これはそうではありません。
軍人皇帝の出身を数だけで見れば、実はバルカン半島出身の皇帝がはるかに多いのです。なぜかといえば、軍人皇帝時代においては、軍隊の中から押し上げられてきた人たちが自分の地元の人を押し上げるということが起こっていたからです。およそ70人の皇帝がローマにはいますが、結果的にその中で最も多いのはバルカン半島の出身者になっています。
このように、最近の研究動向を紹介してローマ史を説明したものが、『教養としての「ローマ史」の読み方』という本です。ですか...