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ブレグジットはグローバリゼーション再編の中の動きなのか

教養としての世界史とローマ史(11)質疑応答編

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
情報・テキスト
教養としての「世界史」と「ローマ史」をテーマにした講座を終え、本村凌二氏が質問に答える。特に注目すべき質問は、ブレグジットとグローバリゼーションとの関係である。本村氏はこれに対して、ローマ帝国の成立と分裂に触れつつ、グローバリゼーションの再編という現象を指摘する。(2018年11月28日開催10MTVオピニオン特別講演会<教養としての「世界史」と「ローマ史」>より、全11話中第11話)
時間:09:28
収録日:2018/11/28
追加日:2019/08/10
≪全文≫

●2つの著書のポイントと特徴


―― ご著書である『教養としての「ローマ史」の読み方』と、『教養としての「世界史」の読み方』について、それぞれのポイントや特徴を教えてください。

本村 自分で言うのもおかしいのですが、私は非常に、教養というものに恵まれた人間でした。それはなぜかといえば、就職した大学が関係しています。最初に就職したのが法政大学の第一教養部です。その後、東京大学教養学部に勤めました。そして東大を辞めた後は、早稲田大学国際教養学部に行きました。こうやって見ると、教養3つに恵まれていました。だから、教養に恵まれたというのは、しゃれで言っているわけです。

 ですがそういう中で、教養学部の類いにいるとやはり、幅広い学生を教えなければいけません。いわゆる史学科という小さなところから授業の要請があれば、それなりの授業をやります。しかし、メインの授業はだいたい、1年生や2年生を相手に、幅広く教えました。それが、大学における私の教育の、一番基本にあったように思います。

 ですから、専門であるローマ史を中心に話しますが、そこは世界史の中のローマ史という形で話すわけです。そういう観点からいえば、『教養としての「世界史」の読み方』という本が、私が教養学部でお話ししてきたことの一番の真髄ないしエッセンスです。私が35年間ほど大学の教養学部で教えてきたものは、ほとんどその中にあります。

 もう1つの『教養としての「ローマ史」の読み方』という本は、ローマ史に関する最近の学説であるとか、ローマ史に対する新しい見方なども盛り込んでいます。例えば先ほど、軍人皇帝時代のお話をしました。その軍人皇帝にどこの出身地の人が多いかと問えば、ローマの皇帝なので当然イタリア人が1番多いだろうと皆さん、思うわけです。しかし実は、これはそうではありません。

 軍人皇帝の出身を数だけで見れば、実はバルカン半島出身の皇帝がはるかに多いのです。なぜかといえば、軍人皇帝時代においては、軍隊の中から押し上げられてきた人たちが自分の地元の人を押し上げるということが起こっていたからです。およそ70人の皇帝がローマにはいますが、結果的にその中で最も多いのはバルカン半島の出身者になっています。

 このように、最近の研究動向を紹介してローマ史を説明したものが、『教養としての「ローマ史」の読み方』という本です。ですから、いわゆる教養学部における学びという意味では、『教養としての「世界史」の読み方』という本の方に、私の授業のエッセンスはほとんど詰まっています。


●ブレグジットはグローバリゼーション再編の中の動きなのか


―― ブレグジットがアングロ・アメリカン世界を再現する助走かもしれないとお考えのようですが、現在はナショナリズムの台頭によってグローバリズムが後退している状況だと思いますので、そこも含めてご説明してください。

本村 グローバリゼーションの中心になっているのは、やはりアングロ・アメリカンであるということです。これまでのグローバリゼーションは、英語圏の人たちが中心となって出来上がっています。その中では、母国語として英語を扱えることがかなり重要になっています。これは、日本人でかなりレベルの高い英語力を身につけた人でも、なかなか細かいところまではうまくいきません。

 そう考えると、逆にアングロ・アメリカンに属するイギリスは、ヨーロッパの中にいますので、やはりEUに対するある種の懸念を持っていたのだと思います。ですから、EUに入ってもポンドを捨てなかったわけです。

 それから、今までのアングロ・アメリカンを中心としたグローバリゼーションに対しては、これからグローバリゼーションの再編が起こってくると思います。そこにおいてはおそらく、いくつか中心になり得る勢力がいます。それがいいか悪いかは別として、中国も新しいグローバリゼーションの1つの中心になり得ます。それから、イギリスが離脱した後のEUも、このようなグローバリゼーションの新たな中心になり得る存在です。

 ブレグジットに関しては、ドーバー海峡は大西洋よりも広いと、もともと象徴的な言われ方がされていたわけです。これはつまり、イギリスとアメリカとの結びつきが非常に強いということを意味します。私は毎年イギリスに行って、そこでBBCのニュースを見ています。すると実は、アメリカのニュースがそのままイギリスに入ってきているわけです。それは、両方とも英語なのでいちいち翻訳する必要がないからです。ドナルド・トランプ大統領の演説であったり、アメリカのスキャンダルや裁判の様子であったり、そういったものがイギリスのテレビの中で報道されています。やはりそれくらい、イギリスとアメリカの間では密接な情報交換があります。

 このように、イギリスがEUを抜...
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