教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
世界史を調理する1つ目の切り口は、「多神教と一神教」という問題である。また、多神教を理解する際に重要なことは、3,000年以上前の世界が、「神々のささやく世界」であったということである。「神々のささやく世界」では、人々はどのように生きていたのだろうか。(2018年11月28日開催10MTVオピニオン特別講演会<教養としての「世界史」と「ローマ史」>より、全11話中第2話)
時間:13分56秒
収録日:2018年11月28日
追加日:2019年7月20日
≪全文≫

●世界史の調理法1:「多神教と一神教」


 今回の講義では切り口として3つのものを取り上げます。それをここでは、世界史の調理法と表現しました。こういったように、世界史を単に羅列的に学ぶのではなくて、3つの切り口で考えてみます。

 世界史を調理する切り口の1つ目は、「多神教と一神教」という問題です。これはよく、「一神教と多神教」という順番でいわれることがあります。しかし私はあくまでも、「多神教と一神教」と呼びます。それはなぜかといえば、多神教の方が早く始まっていて、一神教の方が後から出てきたからです。この順番を踏まえると、多神教の神々をあがめている世界の中でなぜ一人の神をあがめるようになるのか、それは世界史的に考えると、ものすごい驚異であるわけです。

 ですから、心理学者のフロイト(ジークムント・フロイト)は、なぜ人が一神教というものを考えるようになったのか、そこに非常に大きな興味を持ったのです。例えば、巨大な木があるとか、くめども尽きぬ水が出てくる泉があるとか、人々はそういったものにある種の超自然的な力を感じます。そして多神教であれば、そこに神の存在を感じるわけです。このように、神々が至るところにあると考えるのは、実は人間にとってごく当たり前のことなのです。

 それが、唯一にして全能の神が存在すると、なぜ人間が思うようになったのか。こういった多神教と一神教という問題、あるいはそれはなぜ一神教が成立するのかという問題にもなりますけれども、これをまず見ていきたいと思います。ただし私はもともとがローマ史の専門家ですから、私が対象にするのは地中海世界が中心となります。


●「神々のささやく世界」:メソポタミアの場合


 多神教と一神教という切り口を理解する際には、「神々のささやく世界」というものを踏まえておくことが重要です。現代に生きるわれわれは、自分の意思で何かを決定していると思っています。しかし、紀元前1,000年よりも前の時代、今から3,000年ぐらいさかのぼって考えてみると、人々の周りには常に神々がいて、そしてその神々の指示が声となって捉えられているのです。

 上の写真は有名なハンムラビ法典ですが、これもハンムラビ王が太陽神から法典を授かっている場面です。こういったように、神々が常に人間のそばにいるのです。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生