教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ゲルマン民族大移動と現代の移民・AI…なぜ比較すべきか
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(6)世界史の中の異民族
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「世界史の中の異民族」に着目することも、世界史を見ていく上での切り口の一つとして挙げられる。4世紀末からのゲルマン民族の移動がローマ帝国に大きな影響を与えたように、異民族の侵入や異なる文化規範の登場は大きな影響を有する。このことは、現代に対してどのような示唆を与えるのだろうか。(2018年11月28日開催10MTVオピニオン特別講演会<教養としての「世界史」と「ローマ史」>より、全11話中第6話)
時間:7分06秒
収録日:2018年11月28日
追加日:2019年7月27日
≪全文≫

●ゲルマン民族の移動とローマへの影響


 世界史の3つ目の調理法ないし切り口として、世界史の中の異民族の移動というテーマがあります。現代においてもちょうど、移民や難民の問題が非常に大きな問題になっていますが、古代末期でいえば、ゲルマン民族の移動がよく挙げられます。

 最近でも、古代におけるゲルマン民族の移動とはどのようなものであったかが問われることがよくあります。ゲルマン民族は4世紀の末から5世紀にかける時期に移動してきて、ローマ帝国、特に西ローマ帝国が非常に混乱した状態になります。この異民族の侵入に対して、ローマがどのようにそれを受け入れ、あるいは対応してきたかは、今のヨーロッパなどが直面している問題と密接に関係しています。

 特に、ドイツは皮肉な状況に置かれています。ドイツ人の祖先はゲルマン民族です。古代においてローマに入ってきたゲルマン民族が、現代においては移民問題への対応を迫られているわけです。

 ドイツにとって今最も大きな問題は、日本と同じで少子化です。フランスなどはその問題からうまく立ち直れたのですが、ドイツはヨーロッパの中でも少子化対策に苦労している国で、外から労働力をいれないといけない状況になっています。しかし、実際に外から労働力を入れると、文化摩擦がいろいろと起こってきます。ですから今、アンゲラ・メルケル首相はそこに非常に苦労しているわけです。このゲルマン民族が古代末期にローマに入ってきたことは、確かにローマ帝国が滅亡した唯一の理由ではありませんが、1つの原因になったといえます。


●文化的・宗教的他者との接触


 似たようなことは、例えばキリスト教の普及に関してもいえます。キリスト教徒は、ギリシア人やローマ人のそれまでのものの考え方や行動の規範からすると、全く違う行動の規範を有しています。ですから極端な人の場合、キリスト教徒という異質な人々が現れたことに着目して、ローマ帝国の滅亡はキリスト教というがん細胞によって引き起こされたのだといいます。ゲルマン民族の侵入よりも、キリスト教の普及の方が、大きな影響だったという人もいます。

 話を現代に向けますと、移民や難民の問題が特にヨーロッパで盛んに論じられるのはなぜでしょうか。ヨーロッパの場合は、移民や難民の中に特にイスラム教徒が多いということ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(3)戦前から紐解く財政構造
日本も資産格差は案外大きい?…預金の偏在と世代格差
養田功一郎