運と歴史~人は運で決まるか
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「世界最大のモテ男にして勇気のある人間」の成功の秘訣
運と歴史~人は運で決まるか(7)西洋史で最も運を引き寄せた男
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
西洋史で最も運を引き寄せた男について紹介する今回。その人物は勇気も知性も兼ね備え、女性にも人気があり、世界有数の帝国をつくりあげた。しかし彼は、本当に「運」のみでそれらを成し遂げたのか。その内実に迫る。(2024年3月6日開催日本ビジネス協会JBCアカデミア講演「運と歴史~人は運で決まるか」より、全7話中第7話)
時間:9分03秒
収録日:2024年3月6日
追加日:2024年5月30日
≪全文≫

●西洋史で最も運に恵まれていた人物とは誰なのか


 例えば、一番勇気のあった西洋史の人間は誰だと思いますか。運にも恵まれていた。勇気もあった。知性もあった。世界でも有数の帝国をつくった。女性にはモテた。行く先々で、ギリシア人だけではなく、ペルシア人、最終的にはインド人、あるいはセム系、すなわちユダヤ教徒、(イスラム教はまだ出ていなかったので)シリア人、エジプト人の女性にもモテた。そこでは通婚し、民族を融合していった。そういう男性です。何よりもこの男には悔しいほど勇気があった。

 カエサルはいろいろな解釈可能だけれど、彼は実は若禿だったのです。カエサルはたしかに女性にモテた。なぜモテたかというと、別れ方がよかった。別れた後も、その女性とは付き合っていくと。「カエサル、あなたは羽振りがいいみたいだからお金を貸して」「いいよ」という会話が平気で成り立った。別れた女性の誰からも恨まれなかった。それは素晴らしい資質です。

 意外と頭に浮かんできませんか。この世界最大のモテ男にして勇気のある人間。(それは)アレクサンドロス大王です。

 アレクサンドロスは、誰もがすごいと言う。何がすごいか。彼は、知性や節度というものを後天的に持つことができた人間の代表例です。


●アレクサンドロスの遠征を成功させた原因は知力にあった


 彼は東へ遠征していく間に片時も『イーリアス』『オデュッセイア』といったホメロスの書物を手元から離さなかった。それは、私たちのように余暇を楽しむ、あるいは気晴らしのために読んでいるのではない。彼はつねに「勇気とは何か」「知性とは何か」ということをさまざまな実例で確かめるために、本から刺激を受けた。自分も確たるものでなければならないと。だから、アレクサンドロスの遠征を成功させた原因は何かというと、実は知力だったという解釈をする人も多いくらいです。

 アレクサンドロスの先生は誰でしたか。アレクサンドロスの史上最強の家庭教師です。そう、アリストテレスです。アリストテレスが授けた哲学の教えがもっとも生きたのは、アレクサンドロスだったわけです。

 ですから、アレクサンドロスは、単に運が強かった、運が良かった(わけではない)。運も強かったけれど、その運を引いてきたのは、彼が東方世界を教化し、そして東方世界を支配していくために、多くの知識を持ち、自分の征服...

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