運と歴史~人は運で決まるか
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徳川吉宗の政治顧問・室鳩巣が説く「運を磨く」ための方法
運と歴史~人は運で決まるか(5)「運を磨く」ことはできるか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
江戸時代の剣術家にとって非常に大切な「運」があり、江戸時代の高名な儒学者で徳川吉宗の政治顧問だった室鳩巣は「武運を磨くことの大切さ」を説いた。そして、「運はどこから出てくるのか」という問いに対して、「運は天から出てくる」と答えたという。いったいどういうことなのか。室鳩巣の言葉の真意、その中身について、論語からの引用も取り上げながら詳しく解説していく。(2024年3月6日開催日本ビジネス協会JBCアカデミア講演「運と歴史~人は運で決まるか」より、全7話中第5話)
時間:9分26秒
収録日:2024年3月6日
追加日:2024年5月16日
≪全文≫

●「武運」は磨くことができるか


 次に、こういうことに似た日本のケースを見ていきます。運にもいろいろあるけれど、侍たち、剣術家たちにとって大事な運は何だったと思いますか、皆さん。

 宮本武蔵、柳生十兵衛、あるいはそういう種の人物たちにとって、金運(金の運)が大事だったか、あるいは女運(女性運)が良いか悪いかということが大事か。いずれでもありませんね。

 彼らにとって大事なことは、武芸と一緒に並び称される「武運」です。つまり、実際の自分の剣術、あるいは戦において運が味方するかどうか。それを彼らは「武運」と呼んだわけです。

 そうすると、次のことは彼らにとって永久の問いだったわけです。武芸というアート、そして武術というテクニックは、どちらが大切か。あるいはどちらも大切だとすれば、どうやって両立は可能か。なかなか難しい問題です。皆さんはどう答えるか。

 ちょうど5代将軍・徳川綱吉から8代将軍・徳川吉宗にかけて活躍した儒家(儒学者)に室鳩巣という人がいました。江戸時代の人間たちも、この室鳩巣に対して問いをしたのです。室鳩巣は当時、一流の学者であり、かつ吉宗の政治顧問だったような人間です。

 すると、彼は思いがけないことを言いました。要するに、武芸というものは職業だから稽古、トレーニングが大切なことは言うまでもない。だけれど、武運というものが尽きれば、侍にとっても武家にとってもどうしようもない。したがって、武運が大事なのだ。武芸はきちんと磨いて当たり前だ。けれど武運もきちんと磨くべきだ、と。

 そうすると、普通の人間はここで疑問に思うわけです。「武芸を磨く」ということは分かる。練習を行っていけば、ある程度まで剣道、剣術も強くなるし、人と戦っていくこともできる。だけれど、「武運を磨く」とはどういうことでしょうか、ということです。つまり、「武運を稽古しろ」と室鳩巣は言ったわけです。「武運を稽古する」とはどういう意味かということなのです。

 皆さん、武運をどうやって稽古すると思いますか。それがいかにもわれわれ日本人の祖先、先人らしいことなのです。そもそもわれわれのような凡人たちは、室鳩巣の周りにいた人たちと同じように、次のように疑問を持つわけです。「昔から、武芸はともかく、武運は稽古してできるものではない。運は稽古してできるものではない。稽古してできるものな...

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