運と歴史~人は運で決まるか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
全ては運か!?良い運を引っ張ってくるために心がけること
運と歴史~人は運で決まるか(4)「全ては運で決まる」という疑問
経営ビジネス
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「全ては運で決まる」という考え方がある。しかし、この見方に疑義を唱える山内氏。歴史を振り返ってみれば、「運をつかんだ」といえるケースでは、確実に運をつかむ、あるいは味方につけるための方法が見えてくるからだ。ではそうした良い運を引っ張ってくるために心がけることとは何なのか。(2024年3月6日開催日本ビジネス協会JBCアカデミア講演「運と歴史~人は運で決まるか」より、全7話中4話)
時間:12分12秒
収録日:2024年3月6日
追加日:2024年5月9日
≪全文≫

●西郷や大久保は博打で戦争を行ったのか


 そして、われわれの次なる疑問は、「全ては運か」ということです。

 先ほど関ヶ原の戦いを例に出しましたが、鳥羽・伏見の戦いをご存じですか。幕末に薩摩を中心とし、最終的には薩長土になりましたが、実際は薩摩です。薩摩と(旧)幕府軍が戦って、西郷・大久保らの薩摩軍が結局、(旧)幕府の軍隊を打ち負かし、これが開運の始まりであって、幕府は最終的に倒れて新政府ができた。

 結局、西郷や大久保らは「勝つも負けるも時の運」ということで一種の博打であったのかということです。戦争を博打で行ったのは、戦前の帝国陸軍(わが国に最近までいた陸軍)を例外とすれば、近世近代においては非常に珍しいことです。彼らが行ったことは、戦争を博打として考えたところです。

 博打で当たった最大のケースが真珠湾攻撃ということになる。そしてマレー沖海戦です。これは開戦劈頭においては当たったのだけれど、だんだんとそういった博打が当たらなくなってくる。最も重要な「運」というものをつかむためには、実力がなければいけない。

 本当の彼我の力の差を考えたら、日本が勝っていくファクター(アメリカに勝つファクター)は非常に少なかった。生産力や補給力を含めてだんだんと弱まってくるわけです。西郷たちは博打ではないのです。そのときどきの運も考えたけれど、それだけの準備をきちんとしたということです。「運を天に任せる」という言葉はあるけれど、帝国陸軍のようにただ天に任せて博打のような戦いをしたわけではない。

 徳川家康が「運の善し悪しは人知(人の知恵)ではどうすることもできない。だから関ヶ原の戦いでは成り行きに任せて勝ったのではない」のは、先ほど触れた通りです。黒田長政なども使って政治工作もしたり、内部撹乱などもしたりする。そういう中で勝利を得たのだから、偶然ではありません。


●「運が全て」という見方は妥当か


 現代人ならば素直に受け止められないことは何か。「何でも運だ」という見方、「運で全て決まってしまう」という見方は、受け入れられないことです。先ほどから語っているのは、そういうことなのです。ギリシア古典には「人間のいとなみは、運であり思慮ではないと考える」とあるけれど、私は決して同意できない。

 『読売新聞』3月4日月曜日の朝刊の1、2面に掲載された記事で私が言いたか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
ウォーレン・バフェットの成功哲学(1)「世界一の投資家」の実像
世界一の投資家ウォーレン・バフェット…賢人と呼ばれる理由
桑原晃弥
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
行動経済学とマーケティング(1)「行動経済学」とは何か
人間はそれほど合理的ではない…行動経済学の本質に迫る
阿部誠
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子