『孫子』を読む:形篇
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「智名無く、勇功無し」――孫子に学ぶプロの世界のやり方
『孫子』を読む:形篇(3)プロとは何か
田口佳史(東洋思想研究家)
戦乱に明け暮れた孫子の時代おいて、戦いを極めるプロが存在していた。本当のプロなら、危うく勝つことはあり得なく、戦う前に勝っている状況をつくるのがプロのやり方である。よって、勝ったとしても「智名無く、勇功無し」、すなわち名将として名をあげたり勲章のようなものを胸にぶら下げたりしないということだ。現在の情報化社会において、さまざまな分野でプロと呼ばれる人が活躍しているが、真のプロとしての振る舞い方を孫子から学びたい。(全4話中第3話)
時間:10分59秒
収録日:2020年2月25日
追加日:2020年12月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●味方に犠牲者を出さないためには機敏に知恵を働かせることが重要


 続いて、「故に能<よ>く自ら保ちて、勝を全うす」ですが、これは、自分のほうはあまり攻撃を受けないということで、犠牲者はなくて、相手ばかりが犠牲になるような、そういう戦略をしっかり取っていることが重要なのです。例えば、敵に比べて飛行機が少ないというのであれば、ではどうするのかといったときこそ、知恵の勝負となるわけです。

 それこそ伝統的なものでいえば、凧もあるでしょう。そうしたいろいろなものをうまく使うということが重要で、そこは機に応じてその場をうまく取り仕切ってしまうということです。言ってみれば「機敏」ということですが、「機に応じて敏なり」と言って、要するに敏腕記者などという、あの「敏」です。そういう意味では、素早くクルクルと知恵を働かせるということが、実は大切だということを言っているのです。


●プロなら危うく勝つことはあり得ない


 次です。「勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非<あら>ざるなり」。いよいよ孫子の「真骨頂」ともいうべき台詞、章句がたくさん出てきます。この「勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり」ですが、これはどういうことかというと、言ってみれば、多くの人が見ていて、とても感動するような劇的な勝ち方などというものは、善の善なるものではないと言っているわけです。

「戦ひ勝ちて天下善しと曰ふも」と、戦いによく勝ちましたね、よく戦いましたね、と天下が言うのも、「善の善なる者に非ざるなり」というのです。これはなぜいけないのでしょうか。要するに、危うく勝ったなどということは、善の善なる者ではないということです。

 プロの勝ち方というのは、もうたやすく相手に勝っているようなものですから、見ていても面白くもなんともないわけです。必ずこちらが勝つだろうというような、準備万端ができていて、それで自分のほうが情報もいろんな準備も全うされていますから、簡単に勝つわけです。

 ですから、プロは危うく勝つなどということはあり得ないのです。プロは当たり前に勝つということを最大の誇りにしているからです。ですから、見ているほうが面白く、どちらが勝つのか分からないような、危うくこっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(3)Human Co-becomingと存在神学への対抗
耳障りな言葉がポイント!?新しい概念を生み出すチャンス
中島隆博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄