『孫子』を読む:形篇
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
孫子が忠告する「攻撃は最大の防御」の本当の意味
『孫子』を読む:形篇(2)「攻撃は最大の防御」
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
一般に「攻撃は最大の防御なり」といわれているが、これはどういう意味なのか。「形篇」で語られている防御と攻撃についての話は、一般的に考えられていることとは逆から説いているものといえるだろう。先に攻撃をしかけ、その戦闘力でもって相手を屈服させるのではなく、相手がどのような攻撃をしても、絶対に勝てないと分からせる防御力こそが最大なのである。(全4話中第2話)
時間:9分38秒
収録日:2020年2月25日
追加日:2020年12月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●軍事レベルの高さを見せつける防御体制


 今から150年以上前の佐久間象山も、まず防御の最大のポイントは敵に侮られることがないことだと考えています。侮られてはいけない、馬鹿にされてはいけないということです。

 馬鹿にされるというのはどのようなことかというと、軍事担当者がちょっと見て、なぜこんなところに場違いの大砲が据えてあるのかとか、ここのところはこちらから軽く通過できるではないかとか、そのような甘く安易な防備に対しては、現実の問題として、これは防御にはなりません。もっと恐ろしいことは、これは軍事のプロが少ないぞ、軍事に長けてないぞと、軍事学の力量が侮られてしまうことで、そこが一番怖いことなのです。

 そういう意味で、気の利いた防御というものがあります。これは全部防御するのではなく、敵が苦労せずに攻めてくるところには、もうすでにきちんと手が打ってあるということです。敵がちょっと苦労するかもしれないと考えて、それでも攻めてきたときを想定して、そこにもきちんと防御がしてあることです。これはどう考えても攻撃できないぞと、敵が諦めるくらいの狡知に富んだ、頭のいい防御体制ができているかどうかということがとても大切です。それをまず、ここで言っているのです。

「昔の善く戦ふ者は、先づ勝つ可からざるを爲して」というように、つまり防御をしっかりして、それで敵が尻尾を出すのを待っている、ミスをするのを待っているというのが、「勝つ可きを待つ」です。したがって「勝つ可からざるは己に在り」であり、それから「勝つ可きは敵に在り」ということです。

 さらに「故に善く戦ふ者は、勝つ可からざるを爲し能<あた>ふも、敵をして勝つ可からしむる能はず」と言っているように、敵が勝つことができないように完璧にすることであり、それは、敵が簡単にこちらに勝つことができないようにすることは大変効果的なことなのです。現実問題として、防御ばかりではなく、国家の軍事的レベルを相手に見せつけるという意味でも、防御体制は非常に重要なのです。

 そして「故に曰く、勝は知る可くして、爲す可からず」ですが、まず勝つというのは知ることができるということ。それは何かというと、相手を勝てないようにすることがで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(5)世直しクーデターとその成功条件
歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留