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「天祐を受ける人」の秘訣とは何か?

人生に活かす東洋思想(5)自覚が「運の強い人」をつくる

情報・テキスト
「覚悟」ということばは「悟りを覚える」と書く。では、悟りを覚えるにはどうすればいいか。なぜ悟りが必要なのだろうか。四書五経の隅々から「天」の願いを察した話者が、いざという時に「天佑」を得る人になるためのコツを説く。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:06:45
収録日:2019/06/14
追加日:2019/09/06
カテゴリー:
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≪全文≫

●悟りから自覚へ。絶対的存在の支持を得る生き方


田口 悟りを覚えるにはどうしたらいいか、仏教は何をやっているのかについてお話ししましょう。仏教は、英語では「ブディズム」です。ブディズムはどこから来たかというと、ブッダから来ている。ブッダとは何かというと、「目覚めた人」です。いったい何に目覚めたのかというと、「自己」に目覚めた。自己に目覚めることが第一なわけですが、自己に目覚めるとはどういうことなのか。そこに書いてくれというと、「自覚」と書くしかない。だから、自覚を持って生きているかどうか。それがまず重要です。

 自覚とはどういうものか。生まれた瞬間から言えば、まずは子供としての自覚があること。それがあれば、「よく育てていただいている」という親に対する感謝が湧き上がってくる。次に弟ができれば、兄や姉としての自覚ができるし、結婚すれば夫や妻。社会に出れば社員、役職になれば部長の自覚を持つ。これらはすべて自覚で成り立つもので、それなしでは社会はとても混乱してしまいます。混乱を自分がつくっているような人間は、絶対的存在の支持を得られません。

―― なるほど。自覚のない人間は支持を得られないわけですね。


●天の願いを代わりにかなえる人間になる


田口 私は、この50年間ほど儒・仏・道・禅に親しみ、とくに漢籍を読んできて、四書五経などは隅から隅まで読みました。儒家の思想では「天」を大事にしますので、天は何を主張しているのか、何を望んでいるのかを考えながら読みました。人間を不幸にすることや世界を混乱させることを望んでいるような証拠はないか? そうした観点も含めて読んでみましたが、そんなものは一つもありません。あるのはただ一つ、「愉快な人生を歩んでくれ。そのために健全な社会をつくってくれ」。天は、これしか望んでいません。

―― なるほど。「愉快な人生をつくってくれ、歩んでくれ」と天が望んでいる、と。

田口 「そのための健全な社会をつくってくれ」という願いは、いわば天の祈願なのですけれども、天が直接的にそれをすることはできません。なぜなら、天は姿を現せないし、言葉を発することもできないからです。では、どうするかといったときに、「私の代わりに神になる存在をつくろう」と言って生み出したのが人間だという大仮説にたどり着きます。

 仮説を持ち出すと、「単なる仮説ではないか」と言う人もいますが、そもそも今の宇宙の科学は全部仮説から成り立っています。だから、立派な仮説とくだらない仮説があるわけで、くだらないほうは排除したほうがいいけれど、こういう立派な仮説は、ある程度信じる必要があります。

 天は人間という自分の代わりをつくって、多くの人に「愉快な人生を歩んでくれ、健全な社会をつくってくれ」と祈っている。したがって、同様のことを思い、懸命に努力している人間は、天の立場からすると「よくぞ自分の代わりに粉骨砕身やってくれている。ありがたい存在だ」ということになる。それを助けてやろうと思うから、「天祐」がゆくわけです。


●「私の履歴書」に掲載される人たちの共通項


―― 天祐がゆくのは、愉快な人生を歩む人のもとなのですね。

田口 そうです。それを私は「運が強い」と言っている。私は日経新聞の「私の履歴書」を一番丹念に読んだ人間ではないかと思います。なぜなら、あの欄に出るほどの人間に共通項はないかと、まだ若い30代の頃に思ったからです。当時、私は仕事がなくて暇でした。それで、丹念に丹念に読んでいった。すると、共通項が見つかります。それは「ひょんなことから」「ばったりと」「突然」「偶然にも」といった言葉の多さです。この言葉は「運の強さ」を表した言葉であり、運の強さとは「予期せぬ配慮」、すなわち「天祐」にあうことで、それをもって「運が強い」と言っているわけです。

―― 出世する人には、偶然がなくてはならないわけですね。

田口 だから、いつも「天に代わって生きているのだ」という自覚を持ち、周りの人間を豊かにする。心を豊かにして、明るくする。何にもあげることができなければ、せめてみんなが明るくなるようにするべきではないかと努める。偉人などを見ていると、暗い人はあまりいませんよね。

―― 確かにそうですね。

田口 みな、ある種の明るさを持っています。そういうものが成り立った人が天祐を受け、運の強さを表しているのではないかというふうに思います。

―― なるほど。天祐を受ける人の秘訣が分かりました。
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