●「儒・仏・道・禅・神道」の教えは一つの方向を向いている
田口 本来は、その地域や国、民族がずっと持っているものが土台になって、その上に違う地域から来るいろいろな思想・哲学が重なってくるべきです。ところが、日本人が持っていなければいけない「儒・仏・道・禅・神道」が、まったく顧みられていない。私はそれが残念でしょうがない。だから私の仕事は、この「儒・仏・道・禅・神道」を普及することだと考え、60歳からそれを始めました。それは自分の整理にもなります。今が77歳ですから、17年間やってきましたが、「帰一」とはよく言ったものだと思うようになりました。皆さんはこの五つを全然違うものと思われているかもしれないですが、言っているところは全てが一つの方向に向いています。
―― 一つの方向に、「儒・仏・道・禅・神道」の全部が向いているのですか。
田口 簡単に言えば、「天や道や神のような、絶対的存在とどう親しくなるか」ということで、どうすればそれが一緒に歩いてくれるかです。
―― なるほど、なるほど。どうすれば一緒に歩いてもらえるか、と。
田口 そういうことです。
●「絶対的存在」に一緒に歩いてもらうための秘訣とは?
田口 あなたなどはどうでしょうか。一緒に旅行に行く場合、「この人はちょっと嫌だな」という人と「ぜひ行こう」という人がいると思いますが、どういう人がいいですか。
―― それは、やはり人間性のいいことがまず前提になります。その上で、一緒にいる間に気付きやヒントを与えてくれるような経験値が多い人。そういう人だと、結構楽しいですね。
田口 さらに言えば、それは「感動がある人」でしょう。
―― なるほど。確かにそうです。
田口 そうでしょう。何を食べても旨いのかどうか分からない人間だったり、また自分が「すごい、風景だな」と思っているときに「そんなの、どうってことないですよ」というような人間とは行きたくない。
―― そうですね。確かに感動のある人です。
田口 だから、60歳以降に絶対的存在と歩いてもらうための最大の秘訣は「感動人間」になること。
―― そうか、先生。感動人間になることですか。
田口 「へぇー、そうか」「そうだったの?」「すごいね、これは」というような感動人間になればなるほど、向こうから「一緒に旅しようじゃないか」と言ってくれるし、「一緒に行きませ...