運と歴史~人は運で決まるか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
勇気とは先天的か後天的か?西洋古典が答える大事な問い
運と歴史~人は運で決まるか(6)運と知はどちらが勝っているのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
古代ギリシアには、道徳を表す「アレテー」と運や運命を表す「テュケー」という言葉がある。それぞれ東洋における「仁」と「運」に近い言葉だが、ここで一つの疑問が出てくる。それは当時から西洋の人びとを悩ませてきた、「運と知はどちらが勝っているのか」という問題である。これについてどう考えるべきなのか。「アレテー」と「テュケー」の語源をひも解きながら、「勇気」という言葉を例に解説する。(2024年3月6日開催日本ビジネス協会JBCアカデミア講演「運と歴史~人は運で決まるか」より、全7話中第6話)
時間:8分10秒
収録日:2024年3月6日
追加日:2024年5月23日
≪全文≫

●東洋の「仁」と「運」、古代ギリシアの「アレテー」と「テュケー」


 少し日本の話が続いたので、ギリシアの古典の話でしてみましょうか。

 この「運」「仁」という言葉は、ずいぶんと意味がお分かりいただけたと思います。結局、「運」を引いてくるのは、どの時代においても人間関係を大事にし、人と人との結びつきにおいて不実がないこと(「仁」という概念)です。

 もちろん商売を行っていく、あるいは学問的な論争・競争を行っていく。どこにも競争はつきまとうわけです。そこに競争や論争のルールがあって、それを守りながら、勝負が決まることはやむを得ない。問題は、そういった人と競うときのルールが「不仁」であってはいけない、ということです。

 基本的に人同士の信頼や人同士の慈しみというものを持っていなければいけない。そうしないと、子孫は栄えることはできないというわけです。これはなかなか大事なことです。

 この中国や日本でいう「仁」という言葉は、西洋の概念でいうと何か。日本語に訳せば「道徳」という言葉に近い。道徳についてわれわれは「モラル」という言葉を使うのだけれど、もともとの言葉はギリシア語の「アレテー」にさかのぼります。

 基本的にその人の身に備わった徳を表す。そして、特に勇気であるとか、武勇であるという資質を美しい資質(美質)として表す言葉。これがいわば「道徳」です。その「道徳」をさかのぼったもとの言葉が「アレテー」になっていく。日本語に訳せば「道徳」というこの言葉は、もともとの漢語、あるいは近世以前の日本人が使った言葉でいうと「仁」に近い。やはり「道徳」ではないかと私は思うのです。

 「道徳」の対照的な言葉は、古代のギリシアの思想や文学に登場してくる「テュケー」という言葉です。この「テュケー」という言葉は、「運」や「運次第」を意味する。「運命」も意味しました。この「テュケー」と「アレテー」というものが非常に巧妙に組み合わさって、西洋古典に出てくる概念が生きてくるのです。

 皆さんがよくご存じの「運」とは、ギリシア語の系統から入っている言葉ではなく、ラテン語から入ってきている言葉のほうです。「フォルトゥーナ」、すなわち英語の「フォーチュン」という言葉です。「フォーチュン」とは幸運、まさに「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
営業から考える企業戦略(1)成功するブランド戦略とは?
ブランド力を高めるために「自社の強み」を徹底的に聞け
田村潤
組織心理学~若者とのコミュニケーション(1)「Z世代」の特徴と接し方
Z世代は傷つきやすい!?…昔の世代との相違点、共通点とは
山浦一保
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
組織改革の要諦~活性化と人材活用(1)準備、スピード、タイミング
組織改革は最初に全体像と将来像を示すのが重要
秋池玲子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(4)官僚集団の問題と井伊直弼のジレンマ
井伊直弼のジレンマ…政治家の実力と同居した致命的な矛盾
山内昌之
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(3)全皇帝の4分の3は「非漢族」
6000万人の漢人が、三国志の戦乱後に400万人台に…衝撃の人口変動
宮脇淳子
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
ウォーレン・バフェットの成功哲学(1)「世界一の投資家」の実像
世界一の投資家ウォーレン・バフェット…賢人と呼ばれる理由
桑原晃弥