●世界の危機に対応できるか?今改めて考えるべき憲法9条
―― 日本の場合は、現状ですと、日米安保条約というものがありまして、一方で、憲法第9条というものがあるという形になっていまして、そもそも、橋爪先生はこの日米安保にはどういう意義があったものだとお考えでしょうか。
橋爪 日本国憲法をそのままストレートに読むと、日本は交戦権がない、戦争をする意思も能力もない、軍隊を置かないと。こう決めているわけです。
これは、世界の現実政治からいうと、とてもとても危険です。なぜならば、丸腰なので、周辺のどんな国であっても、日本を占領したり、ちょっかいを出したりしようという強い動機になるからです。
なぜ、日本国憲法が新憲法として成立した時に、それでもなんとかなっていたかというと、それはアメリカが日本を占領していたからです。アメリカが日本を占領している。これくらい日本にとって安全な状態はないのです。日本を侵略したらアメリカと喧嘩することになりますから。当時のアメリカはめちゃめちゃ強かったから、誰もこんなことはしないのです。
さて、日本が独立した後に、アメリカと日本の関係が切れてしまうと、当然、日本はどういう方針で安全保障を図ればいいのかということの答えは憲法に書いていないですから、いろいろな可能性があるわけです。
いろいろな議論がありましたけれども、アメリカが日米安保条約という条約を結びました。「日本は国を守るために最低限のことをしてください。いざという場合に、アメリカが日本に駆けつけて日本を守ってあげますよ」、こういう条約を結んだのです。そのために、基地も日本に置きましょうと。
だから、独立したのだけれども、その後も日本が軍事占領されているときと軍事的力学はほとんど同じなのです。だから安全なのです。
でも、「9条と日米安保条約は整合するのか」という問題があり、あまり整合しないというのを気がつきながら、これをほじくり返すとややこしいことになるから、ごまかしごまかし現在までやってきたというのが、日本のやり方です。
このやり方で、最近、強まっている世界の危機に対応できるのかという問題があるので、自分の頭で一から考えなければいけないということです。
●日本政府の考え方は「交戦権と自衛権を区別する」
―― ただ、そういう状況の中でも、「9条の精神を世界に...