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集団的自衛権は国連の理念…「9条の精神」の戦争リスク

ポスト国連と憲法9条・安保(3)集団的自衛権と9条と国連憲章

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
情報・テキスト
『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』(橋爪大三郎著、筑摩書房)
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「平和憲法」ともいわれる所以になっているのが日本の憲法9条。しかし、その「平和」はアメリカの存在があってこそ実現しているという現実がある。世界的に軍事的緊張感が高まっている今般の状況において、「9条の精神を世界に広めれば平和になる」だろうか。日本国憲法は「交戦権」を認めていないが、「自衛権」に基づいて自衛隊を置いている。では集団的自衛権は認められるのか? 実は集団的自衛権は、国連憲章の理念といってもいい。そして、むしろ逆に、「丸腰非武装の精神」を広めたら、国連が維持している世界秩序の基盤を崩してしまいかねない。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:53
収録日:2023/11/01
追加日:2024/01/09
キーワード:
≪全文≫

●世界の危機に対応できるか?今改めて考えるべき憲法9条


―― 日本の場合は、現状ですと、日米安保条約というものがありまして、一方で、憲法第9条というものがあるという形になっていまして、そもそも、橋爪先生はこの日米安保にはどういう意義があったものだとお考えでしょうか。

橋爪 日本国憲法をそのままストレートに読むと、日本は交戦権がない、戦争をする意思も能力もない、軍隊を置かないと。こう決めているわけです。

 これは、世界の現実政治からいうと、とてもとても危険です。なぜならば、丸腰なので、周辺のどんな国であっても、日本を占領したり、ちょっかいを出したりしようという強い動機になるからです。

 なぜ、日本国憲法が新憲法として成立した時に、それでもなんとかなっていたかというと、それはアメリカが日本を占領していたからです。アメリカが日本を占領している。これくらい日本にとって安全な状態はないのです。日本を侵略したらアメリカと喧嘩することになりますから。当時のアメリカはめちゃめちゃ強かったから、誰もこんなことはしないのです。

 さて、日本が独立した後に、アメリカと日本の関係が切れてしまうと、当然、日本はどういう方針で安全保障を図ればいいのかということの答えは憲法に書いていないですから、いろいろな可能性があるわけです。

 いろいろな議論がありましたけれども、アメリカが日米安保条約という条約を結びました。「日本は国を守るために最低限のことをしてください。いざという場合に、アメリカが日本に駆けつけて日本を守ってあげますよ」、こういう条約を結んだのです。そのために、基地も日本に置きましょうと。

 だから、独立したのだけれども、その後も日本が軍事占領されているときと軍事的力学はほとんど同じなのです。だから安全なのです。

 でも、「9条と日米安保条約は整合するのか」という問題があり、あまり整合しないというのを気がつきながら、これをほじくり返すとややこしいことになるから、ごまかしごまかし現在までやってきたというのが、日本のやり方です。

 このやり方で、最近、強まっている世界の危機に対応できるのかという問題があるので、自分の頭で一から考えなければいけないということです。


●日本政府の考え方は「交戦権と自衛権を区別する」


―― ただ、そういう状況の中でも、「9条の精神を世界に広めれば平和になるのだ」
 という声というのも、日本の中では一部ではございますけれども強くあるということですが、先ほど「その形が、いちばん安全を担保できない」というお話でした。そこはやはりそういうことということですよね。

橋爪 いろいろ議論があるのは分かりますけれども、まず日本政府の考え方について理解しようとしてみましょう。

―― はい。

橋爪 日本政府の考え方は、交戦権と自衛権を区別するということです。交戦権というのは9条に規定があります。それは放棄しているのです。つまり、ないのだと言っているわけですから、憲法上、交戦権はないのです。これは明文で書いてあるから、これ(「交戦権はない」こと)を否定することはできません。難しいのです。

 一方、自衛権というのは憲法の条文に書いていないのです。憲法の条文に書いていない自衛権はなぜ存在するのかというと、それは、国民の主権の一部であって、国民が自衛権を持っているのは当然で、当然だから憲法に書いていない。これが政府の憲法解釈だと思います。

―― はい。

橋爪 これは、根も葉もないことではなくて、自衛をするというのは当たり前のことだから、理解できなくはない。

 次に政府は、自衛権はあるのだとしています。では、自衛権をどのように具現化するかというと、国会の立法行為によって、「自衛隊法」というものがあって、自衛隊を置く。そして、防衛庁、今だったら防衛省というものがあって、そこで軍隊そっくりの武力組織というものを持っている。これが現状です。

 だから、「政府は9条を守っていますよ。でも、法律も守っていますよ。そして、日本を守り、世界の平和に貢献していますよ」と言っているわけです。ここまではよろしいですか。

―― はい。

橋爪 これが間違いだという、「9条絶対主義」のような人もいるわけです。けれども、そういう人がいてもいいですが、核戦争や国際社会の現実というものを少し考えたほうがいいと思います。


●集団的自衛権は「国連憲章」の考え方


―― はい。9条の精神で成り立つかどうかということで、もし日本が100万人程度の国家だったらと考えているとどうだろうという話もお書きになっていましたが、それは非常に面白い議論ですね。

橋爪 はい。どのように書いてありましたか。

―― あの中では、例えば、100万人の国家であれば、持てる軍隊の規模も装...
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