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日本以上に切実なのは台湾、問われる「国を守る覚悟」

ウクライナ侵略で一変した国際政治(5)台湾問題と国際社会の声

小原雅博
東京大学名誉教授
情報・テキスト
ロシアを相手に戦うウクライナの姿は、わたしたちに国を守る覚悟、その重さを問いかけてくる。安全保障や防衛同盟は、核恫喝のもとでどこまで頼りにできるのか。今、日本以上に切実なのは台湾である。プーチンと習近平の置かれた条件は違うが、鍵になるのはアメリカの動きである。国際社会も一枚岩ではない。国によりイデオロギーだけでなく、国益が違うからだ。それでも国際秩序を守る方向性の確認が、今後の指針となる。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:38
収録日:2022/05/10
追加日:2022/06/24
タグ:
≪全文≫

●ウクライナ戦争は「対岸の火事ではない」


―― これは、ちょうど今(前回)の質問に似た質問になってしまいますが、(改めてお聞きします。今回のロシアによるウクライナ侵略は)ウクライナの側から見た場合、NATOに入っていなかったことは大きいと思います。しかし、NATOとしては、ウクライナ側に立って本格的な介入をしてしまうと、実際問題として、それこそ核戦争なり全面的なロシアとの対決を覚悟しなければならないことから、今の段階では武器供与のような側面支援に留まっています。

 これを東アジアで考えた場合、もし日本にどこかの国が侵攻してくるような事態を想定すると、どうなのか。前回言われたようにアメリカとの関係を強化して、日米同盟に書かれている通りの軍事行動がアメリカ軍によって行われればいいけれども、そうでない場合、どうするのか。武器供与はあっても誰も助けてくれなければ、日本人はウクライナのように頑張って戦い続けるのかどうか。極東から見ている日本人としても、いろいろ考えさせられるところだと思いますが、どのようにお考えになりますか。

小原 これは難しい問題です。平和は本当にただなのかというと、それにはやはりコストがかかっている。そのコストとは、国防の防衛費や同盟維持のためのコストだけではなくて、ひょっとしたら血を流さないといけないかもしれないところまで、われわれは覚悟を持っているかどうかということになってきます。ただ、そこをギリギリまで詰められるかというと、「それは仮定の話です」ということになり、なかなか実際にはピンとこない話です。

 ウクライナの戦争を本当に「対岸の火事ではない」と認識できるか。自分たちにも最悪のケースが起こるかもしれないと念頭に入れながら、そのときにどうするか、自分たちの国を守る覚悟はあるのか、というところを、今回のケースでわれわれは問われているような気がします。これは相当大変なことです。


●日本以上に切実な台湾――アメリカの台湾関係法と戦略的曖昧


小原 日本以上に切実なのは台湾です。台湾の人たちには、ウクライナの人たちのように、自分たちの土地を血を流しても守り切る覚悟があるか、ないか。ここが問われてくるのだろうと思います。

 台湾の場合は、ウクライナと違ってアメリカに「台湾関係法」があります。ウクライナの場合はNATOに入っていないですし、アメリカとの間に法的な支援の枠組みがあるわけでもない。もちろん今回、政策的に武器支援は早々とやっています。バイデン氏は、ロシアの侵攻がある前からずっと「ロシアの地にアメリカ兵は派遣しない」と言ってきました。

 それは、どういう意味で言っているのかというと、もちろん核戦争を避けないといけない。つまりロシアとアメリカが直接戦争になれば、核戦争になる可能性があるので、そこをなんとか誤解や誤算がないようにと、彼はそこを明確に言ってきましたが、その結果、抑止力が失われているのです。

 台湾については、そうした枠組みがあるということ以上に着目すべき点があります。軍事的な支援については武器供与で行い、「実際に介入する」とは書いていません。その部分は政策でカバーされてきており、台湾に対してアメリカはいわゆる戦略的曖昧をずっと続けてきました。もしも中国が武力で統一しようとしたときに、アメリカが介入するかしないかは明らかになっていないし、明らかにしない。このような政策を、アメリカは一貫して続けてきたわけです。

 これは、「ウクライナに攻め込んだときに、アメリカ兵を出さない」というのとは次元の違う話です。曖昧ではあるけれど、「派遣しない」とは言っていない。つまり派遣する可能性をその中に含むのが「曖昧」なのです。


●3期目の習近平が直面する台湾問題


小原 ウクライナについては、ロシアの誤算がありました。「アメリカは出てこない。だからロシア軍が19万の軍隊で囲んで攻撃すれば、一気に成功する」と踏んだとしても、おかしくはないと思います。それ以外の要素として、例えば2014年の成功体験などももちろんあったわけです。

 しかし台湾の場合、習近平氏はアメリカが出兵する可能性を考慮しないといけません。そこが、プーチン習近平の置かれた条件の違いということです。

 そこは、一つのポイントになります。つまり、アメリカの中では、「それでは足りない」「曖昧ではなく、戦略的な明快性を打ち出すべきだ」とする識者もいるわけです。例えばリチャード・ハース氏のような著名人もそういうことを主張しています。そうでないと、中国とのパワーバランスは台湾関係によって崩れているというわけです。

 2022年秋には、習近平政権の3期目が始まります。自身のレガシーもあれば、なぜ3期もやるのかという声もありますが、台湾が次の総統選を2024年に控え...
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