ウクライナ侵略で一変した国際政治
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ロシアによるウクライナ侵略で国際政治はどう変わったのか
ウクライナ侵略で一変した国際政治(1)歴史的経緯とNATOの存在
小原雅博(東京大学名誉教授)
ロシアによるウクライナ侵略によって、国際政治は一変したといわれる。だが、具体的には何がどう変化したのか。この問題について大事なのは、両国のみならずヨーロッパとロシア、さらにアメリカも含めた各国の関係、その歴史的経緯とともに地政学で考えるということだ。そうした観点で今後の安全保障の秩序を考えていくとき、鍵を握るのはNATOの存在である。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分42秒
収録日:2022年5月10日
追加日:2022年5月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●ウクライナ問題の裏に流れる歴史と地政学


――皆さま、こんにちは。本日は小原雅博先生に「ウクライナ侵略で一変した国際政治」というテーマで講義をいただきたいと思っております。小原先生、どうぞよろしくお願いいたします。

小原 よろしくお願いします。

―― そもそも今般のロシアによるウクライナ侵略によって、何が一変したのかということを最初にお聞きしたいと思います。一体この前と後では何がどう変わったのでしょうか。

小原 今回の事態は急に起こったことではなく、戦争自体も、英語では「フローズン・コンフリクト(Frozen conflict:凍結された紛争)」と呼ばれているものです。こういった事実上の戦争状態が、実は2014年からウクライナでは起きていました。

 それが、今回全面的な侵攻になったということです。ウクライナの問題を考えるときに大事なのは、そうした歴史的な流れとともに地政学ということも考えないといけないと思います。地政学の中で最も大事なのは、NATOの東方拡大という問題です。これはプーチンから始まったのではなく、ゴルバチョフの時代から続いてきました。

 冷戦が終わりソ連が崩壊する過程で、ドイツの統一も起こりましたが、その時に「ワルシャワ条約機構」が解体され、消滅します。もともと東西の両陣営というのは、二つの同盟ブロックの対立で、東側の陣営は「ワルシャワ条約機構」、もう一つが「NATO(北大西洋条約機構)」という西側の軍事ブロックです。これらが対立し、ヨーロッパではチャーチルが「鉄のカーテン」と名付けた存在が東西を分断して対決していたのですが、その片方が倒れてしまったわけです。


●冷戦後の安全保障の形


小原 その結果、その後の安全保障の秩序をどうつくり直していくかということが非常に大きなテーマになったわけです。そこで、NATOがロシアとの関係をどうしていくのかについては、多分二つの道があったと思います。一つはNATOが拡大して、その中にロシアも入るというかたち。もう一つは、全く新しい安全保障体制の秩序(アーキテクチャー)をつくり出すことです。つまり、新しい欧州にふさわしい新しい秩序をつくろうという、もう一つの流れや意見があったわけです。

―― これは先生、エリツィン政権の時には今先生がおっしゃったNATOの中にロシアも入るなど、全く新しい秩序をつくるという動きが実際に進んでいたとい...

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