ウクライナ侵略で一変した国際政治
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ウクライナ侵略で激化した情報戦争と核恫喝の問題
ウクライナ侵略で一変した国際政治(4)情報戦争と核恫喝
小原雅博(東京大学名誉教授)
ウクライナ侵略は情報戦争の熾烈さを浮き彫りにしている。人々の意思も認知も左右する情報とどう対峙していくかは、今われわれが直面している課題である。プーチン大統領による核恫喝の問題はより深刻に世界の歴史を揺るがしつつある。今歯止めをかけるのは、日本の役割ではないだろうか。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分18秒
収録日:2022年5月10日
追加日:2022年6月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●情報戦争と情報分断


小原 今、「情報戦争」ということがいわれています。われわれ日本の企業も含めた情報分野では、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉も出ていて、非常に重要な段階にあります。この情報というものが持つ役割が、今回の戦争でも強く意識されました。

 例えば実際にサイバーを使うような攻撃もありますが、ニセ情報の役割も大きいのです。ロシア国内では情報コントロールが行われ、西側からの外部情報をシャットアウトしました。これにより自分たちのプロパガンダとなるニセ情報を流し、今回の戦争に対する正当性を主張して、国民の支持を得ていく。このような政治的操作が情報分野で行われ、かつ非常に巧みになってきています。

 もちろんウクライナのほうも、自分たちの戦争に資するような情報をいろいろと出しています。今回、こうした情報戦争が非常に大きな役割を担い、影響を与えていることを、われわれは注意しておく必要があるだろうと思います。

 情報戦争ないし情報の分断のようなものは、別にロシアとウクライナだけで起きているわけではありません。例えばアメリカにはFOXニュースという非常に保守的なメディアがあり、これに影響される人もたくさんいるわけです。また、ロシアのプロパガンダをそのまま流すようなメディアやSNSもあります。アメリカの中も別に一枚岩ではないので、そうした中で「民主党は、プーチンあるいはロシアに対して敵対的になるような働きかけを行っているのだ」ということを流すわけです。

 情報をめぐる自分たちの考えが一致しないと、そこに対立が生まれ、社会が分断される。それを加速させ、分断を起こそうとする働きかけをロシアも行っている。そうしたせめぎ合いがあることを、われわれは頭においておく必要があると思います。


●情報規制と言論の自由という問題


―― 情報をきちんと分析して捉えようというときに、「どちらか片方だけの情報を聞いていると分からなくなる」とよく言われますね。例えば今の日本では、明らかにアメリカないしイギリスも含めた西ヨーロッパ系の情報が多く入っているため、「ロシアは悪い侵略国である」という価値観が、ある程度醸成されていると思います。では、相手の言うことも聞いてみようとすると、片やロシアからは「ネオナチだ」とか「東が虐殺されている」という情報が流れてくる。結局、両方の情...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
インテリジェンス・ヒストリー入門(3)戦後日本の構造
戦後日本はなぜインテリジェンスを軽視してきたのか?
中西輝政