ウクライナ侵略で一変した国際政治
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「非ナチ化」というプーチンの演説とプロパガンダの意味
ウクライナ侵略で一変した国際政治(2)地政学とロシアの行動原理
小原雅博(東京大学名誉教授)
ウクライナ侵攻開始時のプーチン大統領演説は、冷戦以降の歴史的経緯、ロシア周辺の地政学、さらにはロシア人の行動原理を知らなければ理解できない。今回はプーチンが口にした「NATOの脅威」について、あるいは「ウクライナをナチ政権と呼ぶ」根拠はどのあたりにあるのか、ご解説いただく。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分04秒
収録日:2022年5月10日
追加日:2022年6月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●ロシア周辺の地政学を見る


小原 今回のウクライナ戦争を始めるにあたって、プーチンは「NATOはわれわれにとって大変な脅威である。NATOがわれわれのすぐそばにまで迫ってきて軍事インフラを配置し、まさにロシアを攻撃しようとしている。ウクライナは、まさにナチ政権だ」と演説を行いました。

 そういうわけで、その背後でこの問題をどう解釈するかは双方違うのですが、そこにはそうした歴史があるのです。

 そして、この地図にあるように、地政学もこれに絡んでくるわけです。

―― これは、ロシアに大きな三角がありますが、この地図はどう見ればいいですか。

小原 はい。この三角は、今のロシアとの関係がいい国です。今回キエフに侵攻するにあたっては、北のほうから軍を出しましたが、この方角にあるのがベラルーシという国です。同盟関係にある国ですが、そうした国々(三角で囲われている国々)。中央アジアの辺りにもあります。これに対して、赤丸がついているのは今まさにウクライナで起きていることと同じで、西側を向いた国です。その中でジョージアは、昔はグルジアといわれていました。

―― トルコの北にある国ですね。

小原 そうです。この国の西北部でロシアと接するところにアブハジア、東南部に南オセチアという地域があります。どちらも独立願望が強いため中央政府との対立があり、紛争が起こっていました。そこに戦争が起きるわけですね。紛争が拡大して、そこにロシアが平和維持軍という形で介入していくわけですが、戦争や紛争が起きている地域はNATOへの加盟が非常に難しいということがあります。ジョージアもウクライナもNATO加盟申請をしていましたが、ジョージアの場合はこのような戦争がありました。また、ウクライナの場合はロシアとの関係もあり、2014年にはクリミア半島併合がありました。さらに、東部でも紛争が起きている。そのようなことで、事実上、今すぐに加盟はできないという難しさがあるわけです。

 ただ、この2国については、将来の加盟に合意するという決定がNATO側からなされています。それが宙ぶらりんになっている中で、今回の全面侵攻が起きたということです。


●緊張の高まる三つの地域


小原 それから、ウクライナの下にモルドバという小さい国があり、ヨーロッパで最も貧しい国といわれています。こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦