日本政治の疑問~政治主導と内閣人事局
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ「安倍一強」状態は生じたのか?
日本政治の疑問~政治主導と内閣人事局(4)政治改革の効果と副作用
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
「安倍一強」という、現在の政治状況はなぜ生まれたのか。政治学者で慶應義塾大学名誉教授の曽根泰教氏によれば、大きな原因の1つは、制度設計の段階で十分に考慮されなかった、一連の政治改革の副作用だという。その政治改革は憲法改正に匹敵するほど大きなインパクトを持っていたというが、いかなるものだったのか。(2018年6月13日開催10MTVオピニオン特別講演会「日本政治の問題はどこにあるのか?」より、全6話中第4話)
時間:8分04秒
収録日:2018年6月13日
追加日:2018年9月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜ「安倍一強」状態は生じたのか


 それではこれまでのお話の大本である、政治改革について議論していきましょう。

 「政治改革は失敗したのだ」と言われます。なぜなら、現在は「安倍一強」であり、党内議論も衰退し、野党が没落したからです。しかし、なぜこうした事態が起きてしまったのでしょうか。昔の日本政治は一党優位制であるといわれてきました。ですが、現在は一党優位ですらなく、安倍一強としかいえない状況です。


●政治改革は失敗したわけではない


 これを考えるためには、まず安倍一強と一党優位制では、何が違うのかを考えなければなりません。私は政治改革が失敗したとは思いません。政治改革は、さまざまな制度改革の効果が及び、薬が効いたという意味で、失敗ではありませんでした。しかし、効いた薬の副作用が、前回までにお話しした内閣人事局の例のような形で出てしまいました。こうした改革の効果と共に現れる副作用をどこまで制度設計時に組み込むか、ということが問題です。

 普通の薬であれば、マウスを使って実験を行い、副作用がないことを確認した上で、人間での治験でも確認し、認可が下ります。しかし、制度設計の場合では、後でお話しする一部を除いて、副作用までは十分に検討されません。


●選挙制度改革のインパクトを軽く見るべきではない


 もう1ついえるのは、政治改革の中心にあった選挙制度改革は、劇薬であったということです。政治家の中には、政治改革を選挙制度改革に矮小化し、政治改革全体で起きている事態をすごく軽く見ることで、見下そうとした人がたくさんいました。

 しかし実際には、選挙制度改革は憲法改正と同等に重要な改革です。東京大学准教授で、憲法学が専門のケネス・盛・マッケルウェイン氏によれば、日本の憲法は他国のものに比べて、非常に文章が短いという特徴があります。憲法が短い代わりに、憲法に書かず、法律事項にしている項目がたくさんあるのも特徴です。他国であれば、同等の事柄は憲法に明記されているため、これを変更したい場合には憲法改正せざるを得ませんが、法律事項にしているということは、その内容については憲法改正をしなくて済むということです。

 選挙制度も、ほとんどの国では憲法に明記されている項目であり、簡単に行うことはできません。しかし、日本の場合は法律事項であるため、政治改革を行う際に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑