●日本政治に関する6つの質問
今日の講話に関して、幾つか質問を頂いています。1つ目の質問は、「安倍首相、菅官房に代わる官邸主導の舵取りができる政治家が現在の日本にいると思いますか。所見をご教示下さい」というものです。
2つ目の質問は、「内閣人事局による高級官僚人事権の行使について実際に最も影響力を行使しているのは、首相、官房長官、官房副長官、首相補佐官、首相秘書官の中で誰でしょうか」というものです。
この2つの質問は非常に似ており、同じ質問の塊です。3つ目の「現実の次官、審議官、局長クラスの人事はどうやって決定されていくのでしょうか」という質問も同様です。
4つ目の質問は、「参議院とは何であり、どのような役割があるのか」というものです。5つ目は、「自民党以外で政権担当を担えるような政党が育たないのはなぜか」、6つ目は「2018年9月の自民党総裁選」についての質問です。
●内閣人事局から、政治改革の問題が見えてくる
ではこの最初のご質問ですが、今の日本の政治を考えるときにとても役に立つ話で、日本政治の本質を語るためのイントロとしては、非常に面白いものです。なぜかというと、この問題と日本の政治改革が、ほとんど相似形だからです。
それでは、何のために内閣人事局は作られたのでしょうか。内閣人事局を作る初期の段階で、私は閣僚に提言を行ったことがあります。石原伸晃氏が小泉内閣で行革担当大臣を務めていた際、審議官以上を内閣の官僚にしたら良いのではないか、と提言しました。その際には役人の中に、現在農水大臣を務めている齋藤健氏がおり、メモを取っていました。
現在、非常に批判が多い内閣人事局の当初の意図は、旧来の「省あって内閣なし」「局あって省なし」という閉鎖的な縦割り組織を転換させることでした。
官僚の忠誠の対象は、内閣ではなく省です。今から30年ほど前に、これを示す象徴的なエピソードがありました。当時の自治省(2001年に総務省に統合)にいたある課長が、選挙制度の有識者の勉強会のメンバー構成を、自分より若い人を集めて作りました。。その課長に聞いた話として、東京大学(東大)では、先輩が後輩に「うちの省に入れ。一生面倒見てやるから」と言って勧誘するそうです。「一生面倒を見る」というのはど...